海外ジャーナルクラブ
2ヶ月前
Zakらは、 免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) による免疫療法後の再発/難治性ホジキンリンパ腫患者を対象として、 JAK阻害薬とICIの併用療法の有用性について第Ⅰ相試験で検討した。 その結果、 53%の全奏効率が得られた。 本研究はScienceにて発表された。
大きな研究成果です。 固形癌において今後はICIと併用時のJAK阻害薬の、 臨床的な効果の検討結果が待ち望まれます。
チェックポイント免疫療法は、 過去10年間に癌治療に革命をもたらしたが、 持続的な奏効が得られるのは一部の患者である。
多くは奏効しないか耐性を獲得するため、 ICIに反応しない患者においては、 ICIによる免疫療法に対する反応を再活性化するというアンメット・クリニカル・ニーズが存在する。
T細胞の疲弊は、 免疫療法に対する反応を制限している。 そこで、 T細胞の疲弊を回復させる小分子のハイスループットスクリーニングの結果を用いて、 「小分子が抗腫瘍T細胞応答を増強し、 癌におけるICI免疫療法の有効性を改善する」 という仮説について検討した。
リンパ球性絨毛膜炎ウイルス (LCMV) クローン13 (Cl13) を用いた免疫抑制モデルでReFrameライブラリーをスクリーニングした結果、 疲弊したT細胞の機能を劇的に回復させる可能性がある多数のJAK阻害薬が抽出された。
JAK阻害薬ルキソリチニブを用いたところ、 JAK阻害が免疫応答を抑制するのではなく、 むしろCl13だけでなくシンジェニック腫瘍モデルでもT細胞とNK細胞の数および機能を増大させ、 ICI免疫療法との併用で腫瘍制御を改善した。
Cl13感染および担癌マウスにJAK阻害薬を投与すると、 骨髄系細胞のトランスクリプトームと機能的特性が、 免疫抑制状態から免疫賦活能を有する状態へと変化した。 ICIの効果を増強するルキソリチニブの能力は骨髄系細胞の存在を条件としており、 ルキソリチニブおよびICI投与マウスの骨髄系細胞は、 主要組織適合性複合体クラスII (MHC-II) を含む抗原提示分子のアップレギュレーションを示した。 これらの結果は、 抗腫瘍T細胞応答を増強するルキソリチニブの能力が、 部分的にはT細胞外在性であり、 骨髄系細胞の調節に依存していることを示している。
ICIによる免疫療法後に再発または難治性のホジキンリンパ腫患者19例を対象として、 JAK阻害薬ルキソリチニブ+抗PD-1抗体ニボルマブの併用療法を行った。
全奏効率 (ORR) は53%であり、 代謝的完全奏効 (CMR) は6/19例で認められた。
臨床効果は、 ルキソリチニブ投与後の好中球対リンパ球比 (NLR) の低下、 抑制性骨髄系細胞の割合、 サイトカイン産生T細胞数の増加と相関していた。
著者らは 「この結果は、 低分子のJAK阻害薬とICIの併用による癌治療の可能性を支持するものである。 免疫調節特性と臨床効果がホジキンリンパ腫に限定されたものではないと考えると、 固形癌、 特に抑制性の骨髄系細胞がICI単剤療法に対する反応の低さと相関するような固形癌における、 ICIと併用時のJAK阻害薬の臨床的な可能性を探ることが重要であろう」 と述べている。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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