HOKUTO編集部
5ヶ月前

欧州臨床腫瘍学会 (ESMO 2025) の消化器癌領域の中から、 神経内分泌腫瘍(NET)、 大腸癌における2つの注目演題について、 国立がん研究センター中央病院 頭頸部・食道内科の山本駿先生にご解説いただきました。


切除不能なNETに対する治療は薬物療法が主体であり、 ソマトスタチンアナログであるランレオチドやオクトレオチド、 mTOR阻害薬エベロリムスやマルチキナーゼ阻害薬スニチニブ、 そしてストレプトゾシン等が従来用いられてきた。 しかし現在ではNETTER-1試験やNETTER-2試験の結果から、 ペプチド受容体放射性核種療法 (Peptide Receptor Radionuclide Therapy : PRRT) も治療選択肢として確立している。 ところが、 後治療におけるPRRTのエビデンスは中腸由来が多く、 前腸や後腸由来のNETに対してはエビデンスが限られている。
そのような中、 no-carrier-added(無担体)で、 不純物を最小化し安全性の懸念を低減させた放射線同位体ルテチウムオキソドトレオチド (177Lu)標識の放射性医薬品-DOTATATE (177Lu-Dotatate、 以下 「XTR008)」 が開発され、 同薬に関する第III相試験XT-XTR008-3-01の結果が報告された。
試験の概要
XT-XTR008-3-01試験は、 ソマトスタチン受容体 (SSTR) 陽性の切除不能な既治療進行NET G1/G2を対象に、 XTR008と高用量の長時間作用型オクトレオチド (LAR) を直接比較した第III相無作為化比較試験である。 主要評価項目は無増悪生存期間 (PFS) であり、 副次評価項目は全生存期間 (OS) や奏効率 (ORR) 等だった。
試験の結果
中間解析時点におけるPFS中央値は、 XTR008群が未到達、 LAR群が5.78ヵ月であり、 XTR008の優越性が証明された (HR 0.06[95%CI 0.031-0.135])。 また追加解析においてもXTR008群で良好な結果が得られていた。
ORRは55.6% vs 2.1%であった。 OS中央値は両群いずれもに未到達だが、 HRは0.50(同0.228-1.091)とXTR008で良好な傾向であった。 またXTR008群における主な治療関連有害事象(TRAE)は血液毒性であり、 許容範囲と考えられた。
NETに対する従来の標準薬物療法は、 短期的な腫瘍縮小効果は乏しいものが多かったが、 PRRTは非常に高い奏効割合を示すことから、 腫瘍の病勢悪化に伴う症状緩和にもつながることが期待される。
またNETTER-1試験やNETTER-2試験では、 特徴的な有害事象 (AE) の1つとして血液関連の2次癌が報告されていたが、 今回のXT-XTR008-3-01試験では1例のみに骨髄異形成症候群 (MDS) が報告されている。 現在までに急性骨髄性白血病 (AML) 等は報告されていないが、 2次癌の発症リスクの評価に関しては、 さらなるフォローアップが必要と考える。
Stage IIIの大腸癌に対する標準的な周術期治療としては、 バイオマーカーにかかわらず、 術後フッ化ピリミジン系薬剤 (FP) +オキサリプラチン併用療法や、 FP単剤療法が用いられる。 近年、 循環腫瘍DNA (ctDNA) に基づく再発リスクの層別化が進められており、 今回大腸癌の術後治療例を対象に、 治療開始前におけるctDNAに基づく治療強度の漸減 (de-escalation) 戦略の有効性がAGITG DYNAMIC-III試験で検討された。
試験の概要
AGITG DYNAMIC-III試験は、 cStage IIIの大腸癌を対象にして、 ctDNAに基づき術後治療の強度を強化 (escalation) または漸減する治療戦略と、 担当医師選択の通常化学療法を直接比較した国際共同第III相試験である。 今回の解析では、 ctDNA陰性例におけるde-escalationと通常治療の比較結果が共有され、 主要評価項目は3年無再発生存期間(RFS)、 副次評価項目はアドヒアランスや安全性だった。
なお、 de-escalationを実施する際、 6ヵ月のFP単剤投与を予定していた場合は、 経過観察または3ヵ月へ短縮、 3ヵ月のオキサリプラチン併用療法を予定していた場合は3-6ヵ月のFP単剤療法へ変更、 6ヵ月のオキサリプラチン併用療法を予定していた場合は3ヵ月のオキサリプラチン投与+3ヵ月、 または6ヵ月のFP併用投与へ変更された。
試験の結果
追跡期間中央値47.0ヵ月における3年RFS率は、 de-escalation 群85.3%、 通常治療群88.1%であり、 事前に規定した非劣性は証明されなかった。 なお、 治療完遂割合はそれぞれ89.9% vs 82.7%、 治療関連の入院割合は8.5% vs 13.2%、 Grade 3-4のTRAE発現率も6.2% vs 10.6%と、 de-escalation群で良好な結果であった。
近年、 ctDNAの臨床応用が進められているが、 消化器癌の中でも大腸癌において、 その進歩は顕著である。 しかしながら、 cStage IIIの大腸癌を対象としたDYNAMIC-III試験のctDNA陽性例におけるescalationコホートの結果と、 今回の結果を併せて考えると、 ctDNAを同対象における治療選択ツールとするにはまだ難しいと考えられる。 ただし患者背景を見ても、 再発高リスク例やミスマッチ修復機構欠損(dMMR)例の不均一が示唆されることから、 ctDNAに基づく治療戦略の開発は、 現在進行中である他の大規模研究の結果と併せて評価されるべきだと考える。

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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