HOKUTO編集部
10日前
切除可能な局所進行食道扁平上皮癌を対象に、 ニボルマブ (NIVO) 併用術前化学療法の安全性および有効性について評価した第I相試験JCOG1804E (FRONTiER試験) の結果から、 良好な安全性と短期的な有効性が示された。 国立がん研究センター中央病院 頭頸部・食道内科の山本駿氏が発表した。
切除可能な局所進行食道扁平上皮癌に対する標準治療は、 第III相JCOG9907試験の結果に基づき、 術前DCF療法 (ドセタキセル+シスプラチン+フルオロウラシル) が確立している。 一方で、 さらなる治療成績の向上を目指した治療開発が進められている。
本試験では、 進行食道癌の標準治療として位置付けられる免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) ニボルマブを術前治療に併用した際の、 安全性および有効性を評価した。
本試験では、 切除可能な局所進行食道扁平上皮癌患者を対象に、 以下の5コホート・3レジメンを施行した後、 手術を実施した。
主要評価項目は、 術前薬物療法開始から術後30日までの用量制限毒性 (DLT) 発現割合とした。
副次評価項目は、 客観的奏効率 (ORR)、 病理学的完全奏効 (pCR)、 R0切除率、 無増悪生存期間 (PFS)、 全生存期間 (OS)、 安全性とした。
患者背景として、 年齢中央値はCF+NIVO群で62歳、 DCF+NIVO群で60歳、 FLOT+NIVO群で64.5歳であった。 性別は各群とも男性が約85%を占めた。 腫瘍の主占居部位は胸部中部食道が多く、 病期ではステージIIIの患者が大半を占めた。
PD-L1 TPS (Tumor Proportion Score) は、 1%未満の割合がCF+NIVO群で15%、 DCF+NIVO群で17%、 FLOT+NIVO群で50%であった。 10%超の割合は、 それぞれ46%、 58%、 8%であった。
PD-L1 CPS (Combined Positive Score) は、 1未満がCF+NIVO群で0%、 DCF+NIVO群で17%、 FLOT+NIVO群で50%、 10超はそれぞれ54%、 75%、 17%であった。
- 術前化学療法中
- 術後30日以内
すべての治療群において、 あらかじめ規定されたDLT発現割合 (1/3以下) を下回り、 安全性が確認された。
術前化学療法後のORR*は、 CF+NIVO群で100%、 DCF+NIVO群で50%、 FLOT+NIVO群で0%であった。 R0切除率はCF+NIVO群で92%、 DCF+NIVO群で83%、 FLOT+NIVO群で83%であり、 治療完遂率**もそれぞれ92%、 83%、 83%であった。
病理学的奏効では、 Grade 3 (著効) はCF+NIVO群15%、 DCF+NIVO群33%、 FLOT+NIVO群50%。 pCR (pT0N0M0) 率は、 それぞれ8%、 33%、 42%であった。
1年PFS率はCF+NIVO群85%、 DCF+NIVO群83%、 FLOT+NIVO群92%であった。 1年OS率はそれぞれ100%、 83%、 92%であった。
以上より、 山本氏は 「切除可能な局所進行食道扁平上皮癌に対する術前CF療法、 DCF療法、 FLOT療法とNIVOの併用は、 周術期合併症を含めた安全性が確認され、 良好な短期的有効性が得られた」 と報告した。
安全性プロファイルは概ね予想どおりであった。 ただし、 FLOT+NIVO群ではペグフィルグラスチムを使用した症例において有害事象の頻度が高まる傾向が見られたため、 使用を制限した。
症例数は限定的ではあるが、 中国を中心にICIの開発が進んでおり、 高い病理学的効果が報告されている。 本試験でも同様の結果が得られており、 それが再現されていると考えている。 今後、 非常に有効な治療戦略となる可能性があると期待している。
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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