HOKUTO編集部
5日前
再発高悪性度非筋層浸潤性膀胱癌 (NMIBC) に対する膀胱全摘除術 (RC) と膀胱温存療法 (BST) を比較評価した前向きコホート研究CISTOの結果より、再発から12ヵ月後の身体機能に差を認めず、 その他大多数の患者報告アウトカムにおいてRCで同等または良好だった。 米・University of Washington School of MedicineのJohn L. Gore氏が発表した。
高悪性度の再発性NMIBCに対しては、 RCとBSTが治療選択肢として確立されているが、 両者の有効性を比較したエビデンスは乏しく、 各治療法を比較するために本試験が実施された。
対象は、 BCGによる治療失敗/不応/後再発、 および直近のBCG歴がなく、 BSTおよびRCのいずれも適応となる再発性高悪性度NMIBCだった。
本試験において、 「RCを受けた患者は、 BSTを受けた患者と比較して12ヵ月後の健康関連QOLが悪化する」 という仮説のもとで前向き観察コホート研究が実施された。
36の大学病院および地域医療機関で対象となった570例が、 BSTまたはRCのいずれかを自分自身で選択した。
各治療後の患者報告および臨床アウトカムについて、 ベースライン、 3/6/9/12ヵ月時点の評価を行った。
主要評価項目はEORTC QLQ-C30による身体機能評価だった。
副次評価項目は一般的なQOL (EORTC QLQ-C30、 EQ-5D)、 精神的健康 (PROMIS、 EORTC QLQ-C30)、 経済的安定性 (EORTC QLQ-C30、 COST)、 排尿機能・性機能・腸機能 (Bladder Cancer Index[BCI]評価)、 生存率だった。
性別、 人種、 民族、 併存疾患指数などの患者背景は両群間で概ねバランスが取れていた。
BST群の方が平均年齢は高く(BST群72.4歳/RC群69.6歳)、 都市に居住している割合が高かった(87%/78%)。 またRC群の方がパートナーのいる割合が高く(78%/86%)、 重症度が高かった(T1の割合 30%/57%、 上皮内癌[CIS]併存割合 45%/55%)。
12ヵ月時のEORTC QLQ-C30評価による身体機能は両群間で差を認めなかった (平均値 BST群 85.4[標準偏差 17.7]、 RC群 86.2[同 17.6])。 一方、 登録時にパートナーがいなかったCIS併存患者に限ると、 身体機能はRC群で良好だった。
ベースライン、 3/6/9/12ヵ月時点の身体機能を時系列で評価すると、 RCは手術侵襲が大きいため、 3ヵ月後にはRC群の身体機能の低下が認められたが、 6ヵ月時にはBSC群と同程度まで回復した。 この傾向は全集団だけでなく、 75歳以上の患者集団にも認められ、 高齢患者においてもRC後の身体機能の非劣性が示された。
12ヵ月時における精神的健康は、 BST群と比較しRC群で良好だった。 特に患者報告による情動機能のスコアが高く、 抑うつと不安症状のレベルが低かった。 また、 経済的安定性もRC群で良好なスコアが示された。
BCI評価による排尿機能は、 登録時にBST群よりRC群で低スコアだったが、 観察期間中に改善し、 12ヵ月時点でBST群との有意差はなかった。
一方でBCI評価による性機能と腸機能は、 RC後に悪い転帰を示した。
12ヵ月時の膀胱癌特異的生存率は、 BST群の99%と比較しRC群が96%と、 両群間に差を認めなかった(調整相対リスク[aRR] 0.98[95%CI 0.96-1.01])。 一方で、 12ヵ月無再発生存 (RFS) 率は、 BST群の67%と比較し、 RC群で96%と有意に良好だった(aRR 0.12[同 0.06-0.27])。 12ヵ月無増悪生存 (PFS) 率はBST群が92%、 RC群が73%と、 BST群で有意に良好だった(aRR 0.80[同 0.73-0.87])。
Gore氏は 「BST群とRC群で、 12ヵ月後の身体機能に有意な差は認められなかった。 全体的な健康状態、 不安や抑うつ、 経済的安定性などは、
膀胱全摘除術を選択した患者の方が良好だった。 再発高悪性度NMIBCの治療において、 膀胱全摘除術は依然として重要な役割を果たしている」 と報告した。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。