日本医療企画
11ヶ月前
ヨコクラ病院がある福岡県みやま市は、 高齢化率が4割近くに達し、 全国に先駆けて高齢化が進む地域だ。 医療の質を落とさず、 地域医療を守る方策はあるのか――。
「ヨーロッパでは教会が地域の拠りどころになっているように、 日本でも、 特に地方では病院がその役割を果たすと思います。 いかにして地域の核になるか、 地域おこしにつなげていくかが課題です。 地域のために何ができるかを一番に考えています」
ヨコクラ病院の横倉義典院長はこう話す。
療養病床は、 各ベッドサイドに吸引器や医療ガス装置を配置し、 重症患者の受け入れ態勢を整整備。 在宅支援は、 以前はみやま市内7件の診療所に配慮し、 訪問看護のみ提供していた。 しかし、 診療所の医師の高齢化により閉院が続き、 3件まで減少したことから、 訪問診療も開始。 在宅支援センターを開設し、 最期まで自宅に住み続けたいと考える高齢者の支援を充実させた。
同市の高齢化率は2045年に想定される全国平均の高齢化率 (36.8%) をすでに超えている。 高齢化の進展を受け、 医療提供体制の見直しを検討すべきところも現れた。
救急搬送件数は横ばいだが、 搬送される時間が変化した。 深夜が減り、 日勤帯、 準夜勤帯、 明け方に偏るようになった。 要因として、 夜間勤務者や自動車を運転する若年者の減少が考えられる。
市内で介護施設の開設が相次ぎ、 在宅から介護施設への入居者が増加した。 在宅を希望していた人たちも、 年を重ねると自宅では住み続けられない。 入居するケースも現れ始め、 外来受診が減少した。
横倉院長は 「高齢化の進展は想定以上に進んでいます。 需要が減り始めているなか、 供給側も激減しており、 スタッフの確保が難しい。 私たちが理想とする医療の質を担保できるスタッフを、 どのようにして集めるのか、 とても悩ましい」 とため息をつく。
横倉院長は、 これまで地域のために必要と考え展開した機能、 質は維持しつつ、 それぞれの規模を縮小することも検討している。 高齢化や人口減少に働き方改革も加わり、 取り組みを改めて考える必要があるという。
医師については深夜帯の救急搬送が少ないため、 宿日直許可を取得し、 医師の働き方改革の方針に沿った提供を継続。 さらに、 外来専従看護師の配置、 医師事務作業補助者の配置で、 事務業務負担を減らしている。
業務の効率化を図るため、 ICT化も進める。 病棟看護師の業務負担軽減のため、 スマートベッドを導入したほか、 電子カルテ、 看護記録、 医事算定など、 院内業務のすべてをつなげるシステムを構築した。
横倉院長は 「『一度やった仕事を二度するな』が合言葉です。 システムが動き出せば、 業務の無駄を省けます。 病院だけでなく、 在宅支援や介護サービスも、 情報を共有できるシステムに移行していく予定です。 行政や他の医療機関とも共有できるのが理想です」 と語る。
「国の施策は、 大病院と診療所を残すということでしょう。 しかし、 近隣の診療所でも閉院が相次ぎ、 国がいう基幹病院と診療所だけで地域医療を守るという絵が描けるかといったら、 決して描けないでしょう」 と横倉院長。 「診療所の役割も、 病院の役割も果たす、 当院のような立ち位置の病院が必要です」 と強調する。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。