ポイント
- グラム陰性桿菌が原因菌の大部分を占める
- 抗菌薬投与前に必ず血液培養•尿一般培養を提出し、菌名判明後速やかにde-escalation
- 男性で本症を疑う場合、 急性前立腺炎、 精巣炎、 精巣上体炎の評価をセットで行う
- 発症から受診まで時間を要した例については、 腎膿瘍などの膿瘍形成を否定する
抗菌薬の選択
基本はグラム陰性桿菌をカバー
第2世代セフェム (以下例)
⚠保険適応は4g/日まで
第3世代セフェム (以下例)
ESBL産生菌の関与を疑うが安定
⚠カバー範囲が広いため乱用しない
ESBL産生菌の関与を疑いショック
カルバペネム系 (以下例)
⚠菌名、感受性判定後にde-escalation必須
結石での閉塞性腎盂腎炎(結石性腎盂腎炎)
(D-Jステント挿入によるドレナージ適応)
抗菌薬の推奨投与期間
*セファレキシン、アモキシシリン・クラブラン酸の場合5~7日間
すぐには解熱しないことが多い. 全身状態が保たれていれば72時間程度経過を見る. 改善しなければ通過障害を疑い「画像精査」を検討.
病態・疫学
- 女性に非常に多い疾患である.
- E.coliが原因菌の大部分を占める.
- 腸球菌やレンサ球菌は病原性が弱く通常は起炎菌にならないが、 免疫が低下した高齢者ではその限りではない.
- リスクとしては、 性交渉、 殺精子剤、 尿路感染症の既往、 新たなパートナー、 母親または娘に尿路感染症の既往がある場合など.
診断
診断は以下の1~3で行う
- 尿沈渣で白血球≧10/HPF、菌量≧10⁵
- 尿路症状あり (発熱、 側腹部痛、 腰痛、 CVA叩打痛、 嘔気、 嘔吐など)
- 他の熱源を否定する
その他の注意点
- 尿グラム染色で、 白血球による貪食を伴う菌を多数認める。単一菌であればより本症が疑わしい.
- 尿白血球エラスターゼ陽性、 亜硝酸塩陽性も診断的である.
- 腎臓の肋骨脊柱角(CVA)叩打痛や腎双手診が患側で陽性になることは診断を支持するが、 尿路結石、 腸腰筋膿瘍、 憩室炎、 卵巣病変等でも陽性になりうる等特異度が低い.
- 超音波検査で、 結石による閉塞性腎盂腎炎を否定する.
- 悪寒戦慄や抗菌薬投与後の熱の遷延を伴う場合、 腎膿瘍を疑って画像検査を行う.
参考文献
- David N. Gilbert, M.D.et al. サンフォード抗菌薬ガイドライン2021 (第51版) .ライフサイエンス出版. 2021, 412p
- Therapy for prostatitis, with emphasis on bacterial prostatitis. Expert Opin Pharmacother . 2007 Aug;8(11):1667-74. PMID: 17685884
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最終更新:2022年8月17日
監修医師:聖路加国際病院救急部 清水真人