HOKUTO編集部
2ヶ月前
「切除不能進行・再発胃癌バイオマーカー検査の手引き 第1.1版」¹⁾が日本胃癌学会より公開された。 本改訂では、 CLDN18.2をターゲットとしたゾルベツキシマブの臨床応用開始をはじめ、 各治療薬の適応拡大を反映している。 本稿では、胃癌バイオマーカー検査で用いられる体外診断用医薬品・医療機器を紹介する。
- トラスツズマブ (ハーセプチン®)
- トラスツズマブ デルクステカン (エンハーツ®)
適用判断に必須 (体外診断用医薬品*)
FFPE組織 (ホルマリン固定パラフィン包埋)
- ダコHercepTest II
- ベンタナ ultraView パスウェーHER2 (4B5)
- ヒストファイン HER2キット (MONO)
- ヒストファイン HER2キット (POLY)
- BondポリマーシステムHER2テスト
- パスビジョンHER-2 DNAプローブキット
- ヒストラHER2 FISHキット
- ヒストラHER2 CISHキット
- ベンタナDISH HER2キット
固定液 : 10%中性緩衝ホルマリン
固定時間 : 6~72時間 (各ガイドラインで異なる)
まずは免疫組織化学(IHC)法を実施する。 3+はHER2陽性で「HER2分子標的薬の治療適応あり」 と判断する。 0または1+はHER2陰性で「HER2分子標的薬の治療適応なし」と判断する。 2+の場合は境界域 (equivocal)であり、 ISH法を実施して判断する。
ゾルベツキシマブ (ビロイ®)
適用判断に必須 (コンパニオン診断薬)
FFPE組織 (ホルマリン固定パラフィン包埋)
ベンタナ OptiView CLDN18 (43-14A)
固定液 : 10%中性緩衝ホルマリン
固定時間 : 6~48時間
細胞膜に中等度~強い染色が認められる腫瘍細胞の割合で判断する。
CLDN18陽性 : 腫瘍細胞の割合が75%以上
CLDN18陰性 : 腫瘍細胞の割合が75%未満
- ニボルマブ (オプジーボ®)
- ペムブロリズマブ (キイトルーダ®)
適用判断に考慮が望ましい (体外診断用医薬品*)
FFPE組織 (ホルマリン固定パラフィン包埋)
- PD-L1 IHC 28-8 pharmDx「ダコ」
- PD-L1 IHC 22C3 pharmDx「ダコ」
固定液 : 10%中性緩衝ホルマリン
固定時間 : 検査キットによって異なる
PL-D1発現率の測定には、 CPS (combined positive score) が用いられる。
▼PD-L1 IHC 28-8 pharmDx 「ダコ」
ニボルマブと化学療法の併用療法を行う胃癌患者の特定のための補助に用いる。 🔗添付文書
▼PD-L1 IHC 22C3 pharmDx「ダコ」
ペムブロリズマブと化学療法併用を行う胃癌患者の特定のための補助に用いる。 🔗添付文書
▼各検査と薬剤選択について
ニボルマブまたはペムブロリズマブの使用を検討する場合に、 それぞれに対応する PD-L1検査キットを用いて PD-L1の発現を検討することが理想的だが、 日常臨床で両検査を実施することは難しいと想定される。
現時点では、 胃癌ではコンプリメンタリー検査であることから、 両PD-L1検査キットを用いた結果は、 いずれの薬剤 (ニボルマブ・ペムブロリズマブ) の投与を考慮する上でも参考になり得ると考えられる。 ただし、 それぞれのPD-L1検査キットのカットオフが違う点には注意が必要である。
- ペムブロリズマブ (キイトルーダ®)
適用判断に必須 (コンパニオン診断薬 2次治療~)
FFPE組織 (ホルマリン固定パラフィン包埋) またはMSIは血漿も可能
- MSI検査キット (FALCO)
- FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル
- Guardant360 CDx がん遺伝子パネル
- ベンタナ OptiView PMS2 (A16-4)
- ベンタナ OptiView MSH2 (G219-1129)
- ベンタナ OptiView MSH6 (SP93)
- ベンタナ OptiView MLH1 (M1)
固定液 : 10%中性緩衝ホルマリン
固定時間 : 検査キットによって異なる
▼MSI (FALCO)
5種類のMSIマーカー (BAT‑26、 NR‑21、 BAT‑25、 MONO‑27、 NR‑24) の中で、 MSI+と識別されたマーカーの数で判定する。
陽性 (MSI-H) : MSI+のマーカーが2つ以上
陰性 : MSI+のマーカーが1つorなし
▼dMMR (ベンタナ)
4種類のMMRタンパク質 (MLH1、 MSH2、 MSH6、 PMS2) の消失・発現で判定する。
dMMR : MMRタンパク質の1つ以上が消失
pMMR* : MMRタンパク質がすべて発現
免疫染色結果から予想される機能欠損遺伝子を以下に示す。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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