Gargiuloらは, 大腿動脈アプローチ(TFA)と橈骨動脈アプローチ(TRA)が死亡率や大出血に及ぼす影響をメタ解析で検討. その結果, TRAはTFAと比較し, 30日後の全死亡率および大出血の抑制に関連していることが明らかとなった. 本研究は, Circulation誌において発表された.
📘原著論文
Gargiulo G, et al, Impact on Mortality and Major Bleeding of Radial Versus Femoral Artery Access for Coronary Angiography or Percutaneous Coronary Intervention: a Meta-analysis of Individual Patient Data from Seven Multicenter Randomized Clinical Trials. Circulation. 2022 Aug 29. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.122.061527.PMID: 36036610
👨⚕️HOKUTO監修医コメント
媒介分析というのは, 「ある要因がある結果を引き起こすときに, 何らかの因子を媒介するかどうか」について分析を行うことです.本研究では, 「橈骨動脈アプローチの死亡に対する有益性は大出血の予防によるもの」 は結果が示されていますがそれ以外は不明のようです.
背景
いくつかの無作為化比較試験において, TRAはTFAと比較して侵襲的治療を受ける冠動脈疾患患者の死亡率低下と関連していた.
研究デザイン
- PCIを伴う, または伴わない冠動脈造影を受けた患者においてTRAとTFAを比較した多施設RCTの個別患者データのメタ解析を行った.
- 主要評価項目:全死亡
- 副次評価項目:30日後の大出血
研究結果
- 対象:7つのRCTの合計21,600例(TRA:10,775 vs. TFA:10,825).
- 95%が急性冠症候群(ACS)を呈し, 75.2%がPCIを施行された.
- 全死亡率(1.6%対2.1%, HR 0.77, 95%CI 0.63-0.95, p=0.012)
- TRA:1.6%
- TFA:2.1%
HR 0.77, 95%CI 0.63-0.95, p=0.012
OR 0.55, 95%CI 0.45-0.67, p<0.001
- 死亡率に関するサブグループ解析では, ベースラインのヘモグロビン(交互作用のP=0.033)を除いて一貫した結果が得られた.
- TRAの有益性は, 重症貧血の患者で大きかったが, 軽度の貧血, または貧血が全くない患者では有意ではなかった.
- 多変量で調整後も, TRAは全死亡相対的リスクを24%および大出血相対的リスクを51%減少させることが確認された.
- 媒介分析の結果, TRAの死亡に対する有益性は大出血の予防という部分的なものであり, 因果関係を完全に説明するためには更なるメカニズムの解明が必要であることが示された.
結論
TRAはTFAと比較して, 30日後の全死亡率および大出血の抑制に関連していた. その効果は貧血のある患者において大きかった. 大出血の減少は死亡率に対する効果を部分的にしか説明していない.