CDDP不耐の進行ESCCの1次治療、 FOLFOXが日本人にも有効
著者

HOKUTO編集部

2ヶ月前

CDDP不耐の進行ESCCの1次治療、 FOLFOXが日本人にも有効

 CDDP不耐の進行ESCCの1次治療、 FOLFOXが日本人にも有効
シスプラチン(CDDP) 不耐で、 FOLFOX療法 (レボホリナートカルシウム[I-LV]+オキサリプラチン[L-OHP]+フルオロウラシル[5-FU]併用) が投与可能な臨床病期IVBの進行食道扁平上皮癌 (ESCC) の日本人症例を対象に、 FOLFOXによる1次治療の有効性と安全性を検証した多施設共同前向き観察研究の結果より、 日本人症例に対するFOLFOXの臨床的有効性が示された。 国立がん研究センター中央病院頭頸部・食道内科/消化管内科の山本駿氏が発表した。 

背景

CDDP+フッ化ピリミジン系抗癌薬の2剤併用療法は、 ESCCに対する標準的な1次次治療であった。 FOLFOXは、 大量補液が不要でありCDDPに不耐なESCCに対する有望な治療選択肢であったが、 本邦においては、 同併用療法の有効性と安全性に関する前向き研究のデータが存在しなかった。

試験の概要

対象

測定可能病変を有し、 ECOG PS 0-2でCDDPに不耐かつFOLFOXが投与可能な臨床病期IVB期のESCC症例 : 31例

方法

対象にFOLFOXによる1次治療を実施

L-OHP(85mg/m²、 day1)+I-LV(200mg/m²、 day1)+5-FU(day1に400mg/m²を急速静注、 day1-2に2,400mg/m²を持続静注)を14日毎に投与

評価項目

主要評価項目

奏効割合 (RR)

RRの帰無仮説は片側有意水準0.10とし、 E-DIS試験の結果を参考に、 FOLFOXの奏効割合を30%と仮定した (閾値 : 10%)。

副次的評価項目

全生存期間 (OS)、 無増悪生存期間 (PFS)、 有害事象 (AE)

試験の結果

追跡期間中央値

20.2ヵ月

2021年4月~2022年7月に14施設で31例が登録され、 うち30例がFOLFOX療法を受けた。 2023年7月のデータカットオフ時点で、 30例全ての患者がFOLFOX療法を中止した。 治療中止の理由は病勢進行が86.7%、 AEが13.3%であった。

患者背景

  • 年齢中央値 : 77歳
  • 男性割合 : 96.8%
  • ECOG PS 0/1/2 : 51.6%/38.7%/9.7%
  • クレアチニンクリアランス中央値 : 49.9mL/分
  • G8スコア中央値 : 12

主要評価項目

RR : 22.6% (80%CI 0.13-0.35)

p=0.031

病勢コントロール率は42.0%であり、 80%信頼区間の下限が事前に規定した閾値の10%を上回ったことから、 帰無仮説が棄却され、 FOLFOX療法の有効性が示された。

副次評価項目

PFS中央値

4.4ヵ月

(95%CI 2.3-6.1ヵ月)

OS中央値

13.3ヵ月

(95%CI 9.5ヵ月-NR)

AE

Grade3/4のAE発現割合 : 40%

(好中球減少症26.7%、 貧血3.3%、 悪心6.7%、 食欲不振6.7%、 肺臓炎6.7%、 末梢感覚神経障害3.3%)

結論

臨床病期IVB期でCDDPに不耐、 FOLFOXが投与可能なESCCに対し、 FOLFOXによる1次治療は臨床的な有効性が示され、 忍容性も維持されていた。 この結果から同療法は、 CDDP不耐のESCCにおける有望な治療選択肢となり得る。

山本駿氏のコメント

 CDDP不耐の進行ESCCの1次治療、 FOLFOXが日本人にも有効
講演後のdiscussionに応じる山本氏

本試験は、 cStageIVBのESCCに対する初回薬物療法としてのFOLFOX療法の有効性と安全性を前向きに検討した、 世界で初めての研究である。 今後、 本邦においても、 食道扁平上皮癌でオキサリプラチンをベースにした治療開発が幅広い病期でさらに展開されうると考えられ、 本試験はその流れの中で鏑矢ともいえる研究であろう。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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