インタビュー
10日前

医師・医学生に特化したマッチングアプリ 「iCoi (イコイ) 」 が人気を集めている。 2026年は800組超のカップル成立を見込んでおり、 アプリをリリースした3年前の25倍となるという。 iCoiを開発・運用する医師の小倉健太郎氏は 「医師が出会いに恵まれない構造的な問題を解決したい」 と話す。 (全2回の第1回)
――iCoiが一般のマッチングアプリと違う点はなんですか。
「最大の違いは、 医師がマッチングアプリで直面する、①検証コスト②説明コスト③ミスマッチコストを削減できる点です。 ①は、 医師・医学生に対して医師免許証や学生証の提出と社内審査を必須とすることで、 『相手が本当に医師か分からない』という不安を解消しています。 一般ユーザーも利用可能ですが、 医師という職業への理解を前提とした設計です」

「②は『急患でデートがドタキャン』『当直で連絡が取れない』などの事情を一から説明する必要がありません。 ③はユーザーの価値観を問う質問項目やキャリアに伴う転勤可能性などを記載できる欄を設けることで、 結婚観・人生設計の不一致を抑えています。 さらに、 所属病院や出身大学を指定してあらかじめ非表示にできる 「グループブロック機能」 により、 同じコミュニティ内での身バレにも配慮しています」
――開発のきっかけや背景を教えてください。
「友人の医学生から『研鑽を積むために地方の忙しい病院に行きたいが、 そこでは出会いがなさそうで結婚を諦めることになるかもしれない』と打ち明けられたことがきっかけです。 2021年11月、 私が学部4年の頃でした。 同じような声を周囲でも繰り返し聞いたこともあり、 個人の問題ではなく構造的な課題だと考えるようになりました」
「そこで医師・医学生60人以上にインタビュー、 200人にアンケートを実施したところ、 多くが“出会いの機会そのものが限られている”と感じており、 4人に3人が『医師向けのマッチングサービスがあれば使いたい』と回答しました。 医師の出会いの問題は、 本人の努力では解決しきれない構造があると確信した瞬間でした」

――具体的には、 どういった問題があると分析していますか。
「大きく3つの問題があると考えています」
「1つ目は環境の問題です。 医学部・医局・病院という生活圏が閉じたコミュニティになりやすく、 同じ顔触れの中で出会いが完結してしまう。 地方や僻地で研鑽を積む医師ほど、 この傾向は強まります」
「2つ目は時間とタイミングの問題です。 初期研修・後期研修・専門医取得というキャリア形成のピークが、 結婚・出産の適齢期と完全に重なります。 さらに当直やオンコールで時間資源が常に枯渇しているため、 出会いがあっても関係を深める時間的余裕がない。 返信の遅れやドタキャンが続けば、 相手に医師の働き方への理解がない限り、 関係は途切れてしまいます」

「3つ目は属性の問題です。 狭い業界ゆえに身バレ・評判リスクが極端に高く、 写真一枚で同僚や患者に知られかねません。 さらに医師であること自体が一般のアプリでは『収入が高そう』『多忙すぎる』『プライドが高そう』といった先入観で最初から敬遠される、 あるいは過剰な期待を持たれることも多い。 特に女性医師でこの傾向が顕著です」
「これらに追い打ちをかけているのが、 医局の『お膳立て文化』の消滅です。 かつては上司や先輩が縁談を持ちかける慣習があり、 多忙な医師の婚活を支える隠れたセーフティネットになっていました。 適切な職場環境への配慮から自然と縮小したのは健全な変化ですが、 代替手段が用意されないまま消えたため、 自由恋愛のスタートラインに立つ余裕すらない医師が取り残されてしまった。 iCoiはこの空白を埋める社会インフラとして機能したいと考えています」
――今後の目標をお聞かせください。
「iCoiの医師ユーザーの平均年齢は30歳で、 いわゆる『第一次結婚適齢期』のボリュームゾーンが中心となっています。 興味深いのは、 この世代の結婚観そのものが変わってきていることです。 かつての『医師なら高収入でいつでも結婚できる』という感覚は薄れつつあります。 物価高や将来への不安が広がるなか、 医師という肩書きだけで何も考えずに家庭を築ける時代ではなくなりました」

「医師が良い伴侶と出会えることは、 それ自体が医療の質に直結すると考えています。 家庭という土台があれば長期的なキャリア形成も可能になり、 地方に根を下ろす医師、 開業を継ぐ医師、 研究に打ち込める医師が増える。 出会いや婚活という入口から、 日本の医療全体に貢献していく——これがiCoiの長期的なビジョンです」
2022年リリース。 2026年5月時点の登録者数約4万1000人 (医師・医学生約1万5000人、 一般ユーザー約2万6000人)。 男女比は医師・医学生が約2:1、 一般ユーザーは約1:7。 男性医師の平均年齢29.9歳。女性医師の平均年齢29.2歳。

マッチ数とカップル数は、 2023年2000件・32組、 2024年3万5000件・217組、 2025年15万2000件・559組。 成長を加速し、2026年は24.7万組の新規マッチ、800組超のカップル成立を見込んでいる。

>>ご相談はこちら Email:kentaro.ogura@i-coi.jp」

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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