HOKUTO編集部
5ヶ月前
第64回日本呼吸器学会学術講演会では、大阪公立大学呼吸器内科学准教授で専門医制度統括委員会の浅井一久氏が、 「呼吸器内科領域専門研修の現状」 について解説した。
- 呼吸器内科の専門医取得について
- 受験率と合格率について
- 新専門医制度に対するアンケート結果
新専門医制度において、 呼吸器内科は、 24領域ある"内科サブスペシャルティの1つ"とされた。
そのため、 まず内科専門医の資格が必要となり、 新専門医制度の下ではジェネラリストとしての知識・技量とともに、 呼吸器サブスペシャルティに特化した知識が求められるという。
上記2種の専門医資格取得に向けて、 現在は (1) 標準研修 と (2) 連動研修 という2通りのタイムラインが用意されている。
(1) 標準研修
標準研修では、 まず3年間の内科領域専門研修 (内科専門研修) を受講し、 その後さらに呼吸器内科領域専門研修 (呼吸器専門研修) を3年間の予定で行う。
(2) 連動研修
一方、 連動研修の場合は内科領域専門研修修了前 (2年次以降) から、 並行で呼吸器内科領域専門研修を開始できる*。 標準研修に比べて最長2年間**、 呼吸器内科領域専門研修とのオーバーラップが認められる。
そのため、 「実際は連動研修を選択して同研修を修了する専攻医が多い」という (浅井氏)。
2023年4月から内科領域専門研修を開始した専攻医は、 連動研修では以下が基本とされている。
❶ 研修開始後1年は内科領域に専念
❷ 2年次以降で呼吸器内科領域専門研修
また、 呼吸器内科領域専門医研修の修了条件として、 主担当医・主病名としての呼吸器内科領域専門研修カリキュラム各論に定める全10疾患・病態群を網羅した、 計150例以上の症例経験が必要となる¹⁾。
ただし2023年7月より、 上記150例には、 先述の内科領域専門研修1年目に経験した症例も、 一定の条件*を満たす限り、 3分の1 (50例) を上限に呼吸器内科領域専門研修の症例実績として認められることとされた。
呼吸器内科領域専門研修の修了には、 上記経験症例の登録ならびに症例の病歴要約が25本以上、 呼吸器内科領域専門医認定・更新資格審査委員会に受理される必要がある¹⁾。 一次評価 (指導医等によるプログラム内評価) ・二次評価 (プログラム外評価) を通過すれば修了認定登録が可能になり、 翌年度の呼吸器専門試験の受験資格が得られるという。
病歴要約の外部審査受付は修了認定年度の5月から開始している。
浅井氏は 「病歴要約の審査依頼は例年11月頃に最も多くなるが、 委員会からの差し戻しによる修正期間を考慮すれば、 早期からの提出が賢明である」 と説明した。
直近3年間のデータにおいて、 新専門医制度で内科領域専門研修修了直後に内科専門医認定試験を受験していたのは、 専攻医全体の7割程度であったという。
また、 2010-12年における呼吸器専門医の最短 (~7年目) 取得者の割合は男性で14.5%、 女性で23.9%にとどまっている。
この結果を踏まえ、 浅井氏は「経験すべき症例や修了要件が定められていることから、 最短で呼吸器専門医を取得する専攻医の割合は少ない。 "自分だけが遅いのでは"と思わないでいただきたい」 としたうえで、 「各プログラム統括管理責任者は、 専攻医のキャリア形成を考慮し、 できる限り迅速な資格取得ができるように工夫を講じて頂きたい」 と述べた。
浅井氏らは2023年12月~24年1月、 専攻医・指導医を対象に 「呼吸器内科領域専門研修に関するアンケート調査」 を実施したという。 講演では、 同調査結果の概要も報告された。
59件の回答のうち、 経験症例の登録を 「ほとんど差し戻されていない」 専攻医は皆無。 「0~24%差し戻された」 が61%と最も多く、 「ほぼ100%差し戻された (18.6%) 」 「75~99%差し戻された (8.5%) 」 と続く結果となった。
医師の働き方改革が専門医資格取得に及ぼす影響については、 117件の回答を得たという。 調査によれば、 専攻医が症例登録や病歴要約に費やす時間を 「自己研鑽」 扱いとしている施設の割合は47%、 指導医に関しては38.5%であった。
働き方改革についてのアンケート結果を踏まえて、 浅井氏は
「今後の働き方改革により、 研修を実施できる施設に偏りが出るのではないかという懸念が生じている」 と報告した。
1) 日本呼吸器学会 「呼吸器内科専門研修に相応しい病歴要約の作成と評価について」 (https://www.jrs.or.jp/file/SR3-2.pdf)
注) 詳細は、 上記の日本呼吸器学会公式サイトでご確認ください
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。