HOKUTO編集部
5ヶ月前
2024年6月12日にゾルベツキシマブ(商品名 : ビロイ®点滴静注用100mg)が 「CLDN18.2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌」 を対象として、 世界で初めて販売開始となった。 最新の論文から、 実臨床での治療への期待と今後の展望について概説する。
Claudin18.2 (CLDN18.2)は、 正常組織でほとんど発現せず、 悪性腫瘍選択性の高いバイオマーカーである。 CLDN18.2陽性率は、 胃癌症例全体では約38%、 HER2陰性胃癌に限定すると約42%である¹⁾。
また、 CLDN18.2陽性率は、 HER2陰性胃癌ではHER2陽性胃癌とに比較してやや高い傾向がある。 同様に、 CPS陰性胃癌ではCPS陽性胃癌に比して、 CLDN18.2陽性率はやや高い。 さらにCLDN18.2陽性胃癌と陰性胃癌を比較すると、 陽性胃癌の予後が不良の傾向がある²⁾。
なお、 CLDN18.2陽性の判定には免疫染色が必要になるが、 生検組織と手術切除標本の染色一致率は81~87%であり、 主病巣と腹膜播種巣との一致率は75%であった³⁾。
進行再発胃癌の1次治療においては、 これらの相互関係・予後との関係性を考慮し症例ごとに適切な薬剤を使用することが重要である。
4月25日、日本胃癌学会ホームページに 「バイオマーカー検査の手引き」⁴⁾が掲載された。
また、 5月22日には、日本胃癌学会ガイドライン委員会から「CLDN18.2陽性、 HER2陰性の治癒切除不能な進行・再発胃癌/胃食道接合部癌に対する一次治療としてのゾルベツキシマブの2つのランダム化第III相試験に関する日本胃癌学会ガイドライン委員会のコメント」⁵⁾ が公開された⁵⁾。
ゾルベツキシマブのmFOLFOX6への上乗せ効果
無増悪生存期間 (PFS)、 全生存期間 (OS) のいずれもプラセボ群に比して、 ゾルベツキシマブ群で有意な延長を認めた。
ゾルベツキシマブのCAPOXへの上乗せ効果
PFS、 OSのいずれもプラセボ群に比して、ゾルベツキシマブ群で有意な延長を認めた。
考慮すべき点として、 悪心・嘔吐が高率に出現したことがある。 一方、 有効性の観点では、 日本人サブグループ解析ならびに胃切除後の症例で非常に良好な成績であった⁶⁾⁷⁾。
日本人患者では、 悪心・嘔吐症状への忍容性が高く、 治療を中止しないことが多かったことが予後向上につながっている可能性がある。 ゾルベツキシマブ治療においては、 治療の継続性が治療効果に重要である可能性がある。
治癒切除不能と判断された進行・再発胃癌の1次治療について、 今後はHER2、 CPS、 CLDN18.2、 MSIの4種類のバイオマーカーについて発現チェックを行い、 レジメンを決めることになる⁸⁾。
現状は、 HER2陽性胃癌については抗HER2抗体トラスツマブを含むレジメンで治療を開始するが、 HER2陰性胃癌では、 CPSやCLDN18.2の発現状況により免疫チェックポイント阻害薬あるいはゾルベツキシマブを選択することになる。
それぞれ単独陽性ならば、 陽性分子を標的とした治療を優先することで議論の余地は少ない。
一方、 仮に両者が陽性である場合には症例の種々の背景因子を考慮して一方を選択することになるだろう。
サブグループ解析では、 胃食道接合部癌に対するゾルベツキシマブの治療効果は限定的であったことや、 悪心・嘔吐による治療中止があることなども考慮する必要があるかもしれない。
また、 抗PD-1抗体ニボルマブについては、 3次治療で使用する選択肢があり、 ニボルマブ単独でも優れた治療効果が期待できることから、 1次治療ではゾルベツキシマブを優先するという考え方もあり得る。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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