仲野 兼司(がん研有明病院 総合腫瘍科)
27日前
2020年代に入り、 子宮体癌の薬物療法は免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) の1次治療への導入により大きく進化し、 予後の改善が報告されています。 さらに、 2024年11月にはPARP阻害薬による維持療法が承認され、 治療戦略は一層多様化しています。 本記事では、 子宮体癌の薬物療法において押さえておくべき最新のトピックをまとめて紹介します。
従来、 子宮体癌の組織型は類内膜癌、 粘液性癌、 漿液性癌、 明細胞癌、 神経内分泌腫瘍、 混合癌、 未分化癌、 癌肉腫などに分類されてきました。
しかし近年、 TCGA*の統合ゲノム解析により、 以下の4つのサブタイプ分類が提唱され¹⁾、 一部の臨床試験でも組み入れ基準やサブ解析に用いられています。
この分子分類は今後の治療選択や臨床試験設計において、 さらに重要性を増すと考えられます。
従来の進行子宮体癌の1次治療の標準治療であるカルボプラチン+パクリタキセル (TC療法) に、 抗PD-1抗体ペムブロリズマブや抗PD-L1抗体デュルバルマブを追加する有効性を検証した第III相試験において、 無増悪生存期間 (PFS) の延長が報告されています。 これらの結果を基に、 日本でも1次治療におけるICIの併用が承認されました。
デュルバルマブ
TC療法への追加投与および維持療法としての有効性を検証した第Ⅲ相無作為化比較試験DUO-Eでは、 PFSの有意な延長が確認され、 2024年11月に本邦承認となりました。
🔹 DUO-E試験 (デュルバルマブ+TC療法 vs. TC療法)
ペムブロリズマブ
TC療法との併用を評価した第Ⅲ相無作為化比較試験において、 PFSおよびOSの有意な延長効果が示され、 2024年12月に本邦で承認されました。 一方、 すでに2次治療として承認されているペムブロリズマブ+レンバチニブ療法については、 1次治療における優越性を検証した第Ⅲ相無作為化比較試験LEAP-001において統計学的有意差を示すことはできませんでした。
🔹 NRG GY018/KEYNOTE-868試験 (ペムブロリズマブ+TC療法 vs. TC療法)
🔹 LEAP-001試験 (ペムブロリズマブ+レンバチニブ vs. TC療法)
前述のDUO-E試験では、 デュルバルマブ併用TC療法後の維持療法としてPARP阻害薬オラパリブの有効性も検証されました。 その結果、 オラパリブの上乗せ効果はミスマッチ修復機構正常 (pMMR) 患者において主に認められました。 これは、 PARP阻害薬が腫瘍内にDNA損傷を蓄積させ、 腫瘍免疫原性を高めることでICIの効果を増強した可能性が示唆されています。 この結果を踏まえ、 2024年11月に本邦で承認されました。
🔹 DUO-E試験 (デュルバルマブ+TC療法 vs. TC療法)
Ⅲ/ⅣA期の局所進行子宮体癌に対して、 術後補助療法としてシスプラチン併用化学放射線療法 (CRT) 後にTC療法4サイクルを行う群と、 TC療法6サイクルを行う群を比較した第Ⅲ相無作為化比較試験NRG258において、 最終解析でもCRT併用によるOS改善効果は認められませんでした。
🔹 NRG258試験 (CRT+TC療法 vs. TC療法)
高リスク子宮体癌において、 標準的な術後補助療法 (化学療法 ± 放射線療法) に抗PD-1抗体ペムブロリズマブを追加する有効性を検証した第Ⅲ相無作為化比較試験KEYNOTE-B21では、 ミスマッチ修復欠損 (dMMR) 患者集団において無病生存期間の有意な延長効果が報告されました。
🔹 KEYNOTE-B21試験 (ペムブロリズマブ+TC療法 vs. TC療法)
子宮体癌および癌肉腫は、一定の割合でHER2陽性例が存在します。 HER2を標的としたADCであるトラスツズマブ デルクステカン (T-DXd) の有効性が複数の試験で報告されています。
🔹 DESTINY-PanTumor02試験
🔹 STATICE試験 (NCCH1615)
TROP-2を標的とするADCであるサシツズマブ ゴビテカンも、 進行子宮体癌患者において有望な治療選択肢とされています。 第II相バスケット試験TROPiCS-03では、 有効性と安全性が示され、 今後の開発が期待されています。
🔹 TROPiCS-03試験
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専門 : 腫瘍内科 (骨軟部腫瘍、 頭頸部腫瘍、 原発不明癌、 希少がん、 その他がん薬物療法全般)
一言 : がん薬物療法に関する論文を中心に、 勉強した内容を記事にしています。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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