海外ジャーナルクラブ
2ヶ月前
Chaudhryらは、 プロテインS欠乏に着目して血栓症のリスクを検討した。 横断研究の結果、 PROS1機能喪失変異のヘテロ接合患者では静脈血栓塞栓症 (VTE) リスクが大きく増加し、 プロテインS欠乏があるとPROS1変異の有無に関わらずVTEと末梢動脈疾患のリスクが有意に増加することが明らかになった。 この研究結果はJAMA誌に発表された。
UKおよびUSバイオバンク研究のため、 特にプロテインS欠乏が多いアジア系の参加者が少ないことがlimitationとして挙げられています。
これまでの研究では、 プロテインS欠乏が静脈血栓塞栓症 (VTE) や動脈血栓症のリスクをどの程度増加させるのかについては、 明確なエビデンスが不足していた。
そこで今回の研究では、 大規模データを用いてプロテインS欠乏と各種血栓症リスクの関連を評価することを目的とした。
UK Biobank (42万6,436例) および US National Institutes of Health All of Us (20万4,006例) のバイオリポジトリから得られた縦断的集団コホートを用いた横断的研究を実施した。 UK Biobankでは2006~2010年に参加者を登録、 2020年5月19日まで追跡し、 4万4,431例でプロテインS値を測定した。 All of Usでは、 2017年より継続的に登録中である。
プロテインSをコードするPROS1のまれな生殖細胞系列変異を 「遺伝子変異がタンパク質の活性を阻害する確率のin silico予測」 である functional impact score (FIS) で分類し、 PROS1変異および血漿中プロテインS低濃度と血栓症リスクの関連を解析した。
FISが1.0の最高リスクPROS1変異 (ナンセンス変異、 フレームシフト変異、 必須スプライス部位変異) をヘテロ接合で持つ患者はまれであり、 調整有病率は英国で0.0091%、 米国で0.0178%であった。 この変異があるとVTEリスクが顕著に増加し (OR 14.01, 95%CI 6.98-27.14, p=9.09×10⁻¹¹)、 プロテインS値が正常の48.0%に低下 (非保因者との比較でp=0.02) していた。
一方で、 損傷の少ないミスセンス変異 (FIS≥0.7) はより一般的であり、 調整有病率は英国で0.22%、 米国で0.20%であった。 VTEリスクの点推定値は小さい傾向 (OR 1.977, 95%CI 1.552-2.483, p=1.95×10⁻⁷) であり、 プロテインS値のわずかな低下と関連していた。
PROS1変異と動脈血栓症 (心筋梗塞、 末梢動脈疾患、 非心原性虚血性脳卒中) の関連は認められなかった。 PROS1変異と血漿中プロテインS低値の関連は明確には認められなかったが、 プロテインS欠乏は、 PROS1変異の有無に関係なくVTEおよび末梢動脈疾患と有意に関連していた。
Kaplan-Meier解析の結果、 PROS1の生殖細胞系列機能喪失変異がある患者では、 VTEリスク増加が生涯にわたって持続することが示された (log-rank p=0.0005)。
著者らは 「遺伝的に定義されたPROS1プロテイン欠乏症患者は極めてまれであるが、 一般集団におけるVTEの危険因子としては、 これまで理解されていたよりも強いものである。 一方で、 循環性血漿プロテインS欠乏は、 PROS1変異よりも後天的、 環境的または分子間作用性の遺伝的因子によって引き起こされる可能性が高く、 血漿中プロテインS低値はVTEおよび末梢動脈疾患と関連している」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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