海外ジャーナルクラブ
13日前
横浜市立大学市民総合医療センター講師の沼田正勝氏らは、 直腸癌の男性患者を対象に、 手術が性機能に与える影響を前向き多施設共同第Ⅱ相試験LANDMARCで検討した。 その結果、 ロボット支援下手術では腹腔鏡下手術と比較し、 射精障害や性交障害の発生率が低いことが示された。 本研究はAnn Surg誌にて発表された。
ぜひとも本文を読んで、 本文の結論とabstractの結論の記載の差を味わっていただきたいです。
直腸癌手術後の性機能障害は、 患者のQOLに大きな影響を与える。 従来の評価指標であるInternational Index of Erectile Function-5 (IIEF-5) は性交渉を前提としており、 術後に性行為頻度が減少した患者の評価には適さない。
この課題を解決するため、 勃起硬度スコア (EHS) と射精機能アンケート (EORTC QLQ-CR38) を用いた新たな評価法を採用し、 性機能障害の包括的評価を試みた。
対象は直腸癌に対し、 腹腔鏡下手術、 ロボット支援下手術、 経肛門的切除術を受けた男性患者399例である。 1 : 1の傾向スコアマッチングにより、 腹腔鏡下手術群、 ロボット支援下手術群の比較がなされた。 なお、 経肛門的切除術群は独立して評価された。
主要評価項目は性機能障害の発生率であり、 術後3ヵ月、 6ヵ月、 12ヵ月の時点でIIEF-5、 EHS、 EORTC QLQ-CR38を用いて性機能 (勃起障害、 射精障害、 性交障害) を評価した。
射精障害の発生率
ロボット支援下手術群で有意に低かった (p<0.05)。
性交障害の発生率
ロボット支援下手術群で低い傾向が示されたが、 有意差はなかった。
術後6ヵ月
p=0.093
術後12ヵ月
p=0.055
勃起障害の発生率は、 腹腔鏡下手術群、 ロボット支援下手術群間で有意差はなかった (p=0.796)。
経肛門的切除術群では、 術後3ヵ月で勃起障害および射精障害の発生率が高かったが、 12ヵ月時点では一定の回復がみられた。
著者らは 「直腸癌の低侵襲手術後、 男性性機能障害 (勃起障害、 射精障害、 性交障害) は一般的に見られるが、 ロボット支援下手術では射精障害の発生率が有意に低く、 性交障害の割合も少なかった。 術後の包括的な性機能評価は、 患者への情報提供を充実させ、 QOLを向上させる上で不可欠である」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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