寄稿ライター
4ヶ月前
こんにちは、 Dr.Genjohです。 連載 「先生の診療科、 食べていけますか?」 の第2回は 「コスパの良い都道府県は結局どこ?」 のテーマについて考察します。
連載初回は地域枠の定員が増えたことで医師余りが加速していることは紹介しました。 今回は、 どの地域で医師余りが発生するかを具体的に見ていきます。
まず、 医師の偏在は下の数式で評価されています。
「医師偏在指標」 とは、 2036年に向けて医師偏在解消を目指すための指標。 人口10万人当たりの医師数に加え、 5つの要素 (医療ニーズと2036年の人口・人口構成の変化、 患者の流出入、 へき地の地理的条件、 区域・診療科といった医師偏在の単位など) を加味して算出されます。
医師偏在指標が高い地方は 「医師余り」 が、 低い地方は 「医師不足」 が、 それぞれ予想されます。
上の地図は青色が医師少数、 黄色が医師多数の都道府県を示します。 医師の分布は基本的に西高東低であることが一目瞭然です。 東北、 関東(東京を除く)、 甲信越、 中部地方には医師が少なく、 近畿、 中国、 四国、 九州地方には医師が多い傾向にあります。
この分布は必ずしも人口や都会度とは相関していません。 東京、 京都、 福岡などは医師が多い一方、 宮城、 愛知、 神奈川などでは全国平均を下回っているのです。
特筆すべきは東京に隣接しているにも関わらず圧倒的な医師不足状態にある埼玉、 新潟を含む東北地方の著明な医師不足状態でしょう。
上のグラフは、 人口10万当たりの40歳未満医師数と医師偏在指標を都道府県ごとにプロットしたものです。 縦軸は人口10万人当たりの40歳未満医師数、 つまり2020年時点での純粋な人口あたりの医師数を示しています。 横軸は2023年時点での医師偏在指標です。
見方としては、
右上ほど医師余りの影響を受けやすく、 左下ほど影響を受けにくいと考えることもできます。
医師が多い都道府県では医師需要が減少し、 競争が激化することは想像に難くないでしょう。 一方、 医師不足の都道府県では医師需要は相対的に維持され、 競争は発生しにくいことが見込まれます。
医師余りの影響を受けずに自分の雇用を守ることを考えるならば、 医師偏在指標の低い県で働くことは一つの方法かもしれません。
しかし、 ここでは都道府県別の人口増減率も考慮しなければいけません。 上の表を見てください。 医師偏在指標の低い (医師が少ない) 都道府県の大部分は、 同時に人口減少の早い都道府県でもあることが多いのです。 医師偏在指標の低い県で勤務した結果、 雇用は守られたものの、 過疎化が進み生活が不便になってしまった、 というケースも想定されます。 何事もバランスが重要ですね。
一般論で語るなら、 都会度が比較的高く、 医師偏在指標が高過ぎず、 しかし人口減少も激しくない都道府県での勤務はパフォーマンスが良いと言えるかもしれません。
他の医師に負けない技術・知識を備えて、 競争に打ち勝ち、 望み通りの生活を送れるならば、 それが最善であると言えますが…。 次回は診療科ごとの偏在についてお話します。
Xアカウント : @DrGenjoh
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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