HOKUTO編集部
1年前
東京医科歯科大は7月4日、 「触覚」 を再現した手術支援ロボットシステム 「Saroa (サロア) サージカルシステム」 を用いた手術に世界で初めて成功したと発表した。 (後日、 執刀した同大・絹笠祐介教授の一問一答を詳報します)
手術日は7月3日。 S字結腸がんの40代患者で、 手術時間は2時間58分。 術後の経過は良好で、 約1週間で退院予定という。
Saroaは同大と東京工業大、 リバーフィールドの3者が共同開発した。 胸部外科のうち心臓外科を除く点は従来と異なるが、 消化器外科、 泌尿器科、 婦人科は従来と同様に使える。
空気圧で3本のアームを動かす。先端の器具にかかった圧力から、臓器などの硬さや軟らかさを推定し、医師の指先に感触を伝える。
最大の特徴は、 3本のアームを空気圧で動かし、 圧力センサーで鉗子の先端にかかる力を医師の指先に直接伝えることができる点だ。 自分の手で直接手術しているような感覚が得られ、 より安全性の高い手術ができると期待されている。 従来の手術支援ロボットは、 カメラによる 「視覚」 の情報のみで手術をしている。
ガーゼと脂肪の硬さの違いもはっきり分かり、「触覚はかなりリアル」 (東京医科歯科大) だという。 カメラはロボット専用ではなく、一般的な内視鏡も使える。 このほかモニター上に、 どれくらいの力が生じているかを数字などで表示することもできる。 ペイシェントカートとサージョンコンソールは従来のおおよそ半分の重さとなっている。
現在は物を把持する感覚のみ医師に伝わるが、 今後は鉗子が何かにぶつかったり物を引っ張ったりする感覚も実装していく方針だという。
da Vinci (ダビンチ) の手術を1000件以上経験し、 今回執刀した東京医科歯科大の絹笠祐介教授は4日の記者会見で 「特に経験の浅い場合は触覚のメリットが大きい。 Saroaは安全面での貢献が大きく、 1人前になるまでの経験数も (触覚があることで) 短縮できる」 と強調した。 絹笠教授も以前、 アームがカメラの死角となった際、 気づかない間に鉗子が血管に接触し、 出血を招いた経験があるという。
その上で、 「症例によっては触覚があることが優位に働くケースも出てくると思う。 ただ、 全ての触覚が備わっているわけではないので、ロボッ トの基本性能を含めて今後も改善を重ねたい」 と話した。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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