診療指針
3日前

米国退役軍人省 (VA) と米国国防総省 (DOD) は、 「プライマリケアにおける喘息管理ガイドライン」 を6年ぶりに改訂した。 同ガイドラインは、 喘息患者の評価・治療を担うプライマリケア医を主な対象とし、 慢性喘息管理における21項目の推奨を提示している。
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喘息治療では近年、 症状出現時に短時間作用性β₂刺激薬 (SABA) のみを使用する治療から、 気道炎症を抑える治療を早期から組み込む方針へと移行している。 症状が軽い患者でも重症増悪のリスクが残ることから、 今回の改訂ではICSの重要性が改めて強調された。
同ガイドラインでは、 ICSを喘息コントロールの基本治療として強く推奨している。 軽症例であっても重症増悪を来す可能性があるため、 症状の頻度のみで治療強度を判断するのではなく、 抗炎症治療を継続的に組み込むことが重要とされた。
ICS+速効性長時間作用性β₂刺激薬 (LABA) 配合薬を使用しない場合でも、 費用、 薬剤採用、 吸入デバイス、 アレルギー、 患者希望などを踏まえ、 何らかの形でICSを治療に含めることが求められる。
12歳以上の喘息患者では、 ICS+速効性LABAを、 長期管理薬と発作時治療薬の両方に用いることが推奨された。 これは、 主にホルモテロール配合薬を用いたMART (Maintenance and Reliever Therapy) /SMART (Single Maintenance and Reliever Therapy) に相当する治療戦略であり、 軽症から中等症・重症喘息まで、 喘息コントロールの変動に応じて用量を調整しやすい点が特徴である。
ICS単独でコントロール不十分な場合には、 ICS+速効性LABAへのステップアップが推奨される。 さらに、 ICS+LABAを維持療法として使用しながらSABAを頓用している患者でも、 ICS+速効性LABAを維持・発作時の両方に用いる戦略が選択肢となる。
中用量または高用量のICS+LABAでも喘息コントロールが不十分な12歳以上の患者では、 長時間作用性ムスカリン受容体拮抗薬 (LAMA) の追加が提案された。 ICS、 LABA、 LAMAによる3剤併用療法は、 症状改善や中等度~重度増悪の抑制に寄与する可能性がある。
一方、 生物学的製剤については主な検討対象外とされ、 専門医への紹介を前提とした位置付けとなっている。 生命を脅かす増悪歴、 挿管歴、 頻回入院、 コントロール困難例、 副作用リスクが高い例、 好酸球性喘息などが疑われる例では、 専門医紹介を考慮する。
喘息が少なくとも3ヵ月以上安定している患者では、 治療のステップダウンを検討できる。 ただし、 ICSは完全に中止するのではなく、 最低有効量への減量や間欠的使用を含め、 抗炎症治療を維持することが基本とされた。
ステップダウン時には、 症状悪化時の対応を含む喘息アクションプランを患者に提示し、 吸入手技やアドヒアランスを定期的に確認する必要がある。 特に、 フォロー困難例や重症増悪リスクが高い患者では、 安易な減量は避けるべきとされている。
薬物療法以外では、 併存疾患への対応も重要なポイントとされた。 胃食道逆流症 (GERD) を伴う喘息患者では、 GERD治療により喘息コントロールや肺機能の改善が期待できるとして、 治療介入が提案されている。
また、 肥満を伴う成人喘息では、 減量により自覚的な喘息コントロールが改善する可能性が示された。 肺機能改善までは一貫して示されていないものの、 体重管理は喘息治療の一部として検討すべき介入と位置付けられる。
屋内空気濾過装置については、 喘息管理目的での使用は弱く非推奨とされた。 HEPAフィルターや二酸化窒素フィルターなどを検討した研究では、 喘息コントロール、 増悪、 医療利用、 肺機能、 QOLに明確な臨床的改善は示されなかった。 費用負担も考慮すると、 空気清浄機を喘息管理の標準的介入として推奨する根拠は乏しいとされた。
安定喘息患者に対するルーチンのスパイロメトリーは推奨されていない。 また、 FeNOをプライマリケアで日常的にモニタリングに用いることや、 対面診療の代替として遠隔診療を行うことについては、 推奨・非推奨を判断するにはエビデンス不十分とされた。
一方で、 電子カルテ上のリマインダーやトラッカーなどを活用し、 吸入手技、 アドヒアランス、 症状コントロールを継続的に確認することは有用とされている。 プライマリケアでは、 治療薬の選択だけでなく、 継続的な管理体制の整備が重要となる。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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