Bukhbinderらは, インフルエンザワクチン接種とアルツハイマー病 (AD) の発症率を4年間の追跡調査において検討. その結果, インフルエンザワクチン接種がADリスクの低下と関連することが明らかとなった. 本研究は, J Alzheimers Dis誌において発表された.
📘原著論文
Bukhbinder AS, et al. Risk of Alzheimer’s Disease Following Influenza Vaccination: A Claims-Based Cohort Study Using Propensity Score Matching. J Alzheimers Dis. 2022 Jun 13. Online ahead of print.
👨⚕️HOKUTO監修医コメント
インフルエンザワクチンだけではなく, 肺炎球菌ワクチン, そのほかジフテリアや破傷風トキソイドワクチンまでADや認知症リスクの低下に関連するとの報告がすでになされています. 新型コロナワクチンも同様の効果が期待されるかもしれません.
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背景
先行研究では, 退役軍人や重篤な慢性疾患を持つ患者など特定の集団において, インフルエンザワクチン接種後にあらゆる病因の認知症のリスクが低下することが明らかにされている. しかし, 米国の高齢者の一般集団におけるインフルエンザワクチン接種のADリスクへの影響は, これまで明らかにされていない.
研究デザイン
- 対象:6年間の振り返り期間中に認知症がなく, フォローアップ開始時までに65歳以上であった患者.
- 傾向スコアマッチング (PSM) を用いて, ベースラインの人口統計学, 薬物使用, 併存疾患が類似したインフルエンザワクチン接種コホートとインフルエンザワクチン未接種コホートを作成した.
- 4年間の追跡期間中のADリスクに対するインフルエンザワクチン接種の効果を評価するために, 相対リスク (RR) および絶対リスク減少 (ARR) を推定した.
研究結果
- 患者の未対照サンプル (n=2,356,479) から, PSMによりインフルエンザワクチン接種-非接種のマッチした935,887組のサンプルを作成した.
- マッチしたサンプルは, 年齢73.7歳 (SD 8.7) , 女性56.9%, 追跡期間中央値46 (IQR 29-48) カ月であった.
- 追跡期間中にインフルエンザワクチン接種者の5.1% (n=47,889) , インフルエンザワクチン非接種者の8.5% (n=79,630) はADを発症していた.
- RR:0.60 (95%CI 0.59-0.61)
- ARR:0.034 (95%CI 0.033-0.035)
- 治療必要数:29.4
結論
本研究は, 65歳以上の米国成人の全国サンプルにおいて, インフルエンザワクチン接種がADリスクの低下と関連することを実証した.