【論文解説】血球貪食性リンパ組織球症のマネジメント (Lancet Rheumatol)
著者

HOKUTO編集部

4ヶ月前

【論文解説】血球貪食性リンパ組織球症のマネジメント (Lancet Rheumatol)

【論文解説】血球貪食性リンパ組織球症のマネジメント (Lancet Rheumatol)

Diagnosis and investigation of suspected haemophagocytic lymphohistiocytosis in adults: 2023 Hyperinflammation and HLH Across Speciality Collaboration (HiHASC) consensus guideline.

Lancet Rheumatol. 2024 Jan;6(1):e51-e62. PMID: 38258680

血球貪食性リンパ組織球症 (HLH、 別名 血球貪食症候群 HPS) が疑われる場合の診断と検査に関してLancet Rheumatol誌にまとめられていたので紹介する。

1. HLHについて

過剰な炎症を伴う異常なリンパ球やマクロファージの活性化により引き起こされる組織球が増殖する疾患の総称であるが、 原因となる疾患はさまざまである。 最近では"SARS-CoV-2感染"などもトリガーとなるとされている。 なお、 原因により以下の2つに大別される

- 家族性HLH

 Perforin 1、 Munc 13D、 Syntaxin 11などの遺伝子異常

- 二次性HLH

 感染症)、 悪性腫瘍、 自己免疫性疾患などに伴う続発性

2. HLHの初期アプローチ

(1) 3つの"F"からHLHを疑う

HLHの初期アプローチおいては 「3つのF」、 すなわち発熱、 血球数低下、 フェリチンの上昇といった臨床症状、検査所見に注目する必要がある。

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参考文献1) を基に編集部作成 これらの血液学的な異常以外にも、 肝脾腫やリンパ節腫瘍などの特徴的な症状について評価することが重要である。

(2) 迅速スクリーニング実施とスコア算出

診断についてはさまざまな基準が発表されているが、 現在では🔢HLH-2004が汎用されている。

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参考文献1) を基に編集部作成

(3) 推奨される追加検査例

HLHの診断のため、 下記のような検査を行うことが推奨されている。

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参考文献1) を基に編集部作成

3. HLHの原因・誘引検査

二次性HLHとしての感染症、悪性腫瘍の評価、 そして家族性HLHの遺伝子学的検査を行う。

(1) 感染症の評価

誘因が不明な患者はすべて感染症検査を受けるべきである。 感染症相談や渡航歴に応じて、 以下を検討する。

寄生虫検査

マラリアフィルムまたは迅速診断検査、 トキソプラズマ症およびリーシュマニア症の血清検査

その他の感染症検査

梅毒、 コクシエラ菌、 ブルセラ菌、 風土病、 リケッチア菌の検査や、 QuantiFERON検査を考慮する。 エプスタイン・バーウイルス血症の場合、 どのリンパ球コンパートメントにエプスタイン・バーウイルスが保有されているかを調べる

組織生検感染検査

結核およびリーシュマニア症の検査

免疫抑制の副作用がないことを確認するための検査 (渡航歴による)

ストロングロイデスおよび糞線虫症の血清検査を考慮する

免疫不全者

アデノウイルス、 C型肝炎ウイルス、 単純ヘルペスウイルス、 ヒトヘルペスウイルス6型
 (HIV、 同種骨髄移植、 キメラ抗原受容体療法、 
固形臓器移植の既往がある場合)、 
パルボウイルスのPCR検査が推奨される。
ヒトヘルペスウイルス8型PCR、 E型肝炎ウイルスPCR、 クリプトコッカス抗原、 β-D-グルカン (免疫グロブリン静注後に偽陽性の可能性あり)、 
便の顕微鏡による卵巣、 嚢胞、 寄生虫の検査を考慮する

(2) 悪性腫瘍の評価

ステロイドによりリンパ腫の発見が難しくなる可能性があり、 早期の生検が推奨される。

骨髄生検

吸引塗抹標本、 フローサイトメトリー、 細胞遺伝学的検査 (リンパ腫または他の悪性腫瘍の場合) を考慮する

その他の生検部位

生検部位は画像診断にて決定する。
- リンパ節
 コア針生検または切除
- 深部皮膚
 血管内リンパ腫または皮膚リンパ腫の場合
- 肝臓または脾臓
- PET-CTで検出された任意部位

(3) 家族性HLHの評価

疑われる場合は以下の検査を考慮する。

- CD107a顆粒放出アッセイ
 異常があれば遺伝子解析に回す
- タンパク発現
(パーフォリン、SH2D1A、XIAP)
 異常があれば遺伝子解析
- フローサイトメトリーベースのアッセイ

4. HLHの診断基準²⁾

HLHの特徴は多くの全身性疾患と重複しているおり、 その存在を認識することは容易ではない。 そのため、 診断を確定し、 根本的な誘因を検出するために、 高度な判断と適時の検査が必要となる。 以下に家族性HLH、 2次性HLH、 特定の状況において用いられる診断基準についてまとめた。

(1) 家族性HLH

家族性HLHの診断基準である🔢HLH-2004の計算方法は以下の通りである。 これは小児HLHを基準にしているため、 成人で使用するには問題点もある。

🔢HLH-2004

1または2が満たされればHLHと診断
 1) 家族性に認められる遺伝子異常を有する
 2) 以下の8つのうち5つ以上を満たす
  • 持続する高熱
  • 脾腫
  • 2系統以上の血球減少
  • Hb <9g/dL
  • 血小板<10万/µL
  • 好中球<1,000/µL
  • 高TG血症 (空腹時≧265mg/dL) および/または低フィブリノゲン血症 (≦150mg/dL)
  • 骨髄、 脾臓またはリンパ節における血球貪食像 (かつ悪性腫瘍の所見なし)
  • NK細胞活性の低下あるいは消失
  • 血清フェリチン値≧500 ng/ml
  • sIL-2R≧2,400 U/ml
参考文献2) を基に編集部作成

(2) 2次性HLH

2次性HLHの診断基準の一つである 「Hスコア」 の計算方法は以下の通りである。

🔢Hスコア

以下の合計点で評価。 合計>169点がHLHの最適な診断基準である。
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参考文献2) を基に編集部作成

(3) 特定の状況下

悪性腫瘍や成人スチル病など特定の状況下で用いられる基準は以下のとおりである。

🔢悪性腫瘍関連最適化HLH炎症 (OHI) 指数

以下の2つをを満たすもの

- sCD25 > 3,900U/mL

- フェリチン> 1,000ng/mL

🔢成人発症スチル病と関連する全身型若年性関節炎 (EULAR/ACR/PRINTO)

フェリチン> 684ng/mLかつ以下いずれか2つ

- 血小板数≤181✕10⁹/L

- AST>48U/L

- TG>156mg/dL orフィブリノゲン≦360mg/dL

出典

  1. Lancet Rheumatol. 2024 Jan;6(1):e51-e62.
  2. Hematology Am Soc Hematol Educ Program. 2023 Dec 8;2023(1):259-266.

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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