Sun EC らは、 夜間に手術を行った外科医が翌日に執刀した手術の転帰を検討する多施設後ろ向き解析を実施した. 結果、 夜間の手術が翌日に手術の転帰の悪化とは関連しないことが示唆された. 本研究はJAMA Intern Med誌において発表された.
背景
医師の疲労と患者転帰との関連を解明することは重要であるが、 データの制約からこれらを検討することは困難であった. 外科医は夜間に緊急手術を行い、 翌日に追加手術を行うことが多いため、 昼間の手術の転帰に悪影響を及ぼす可能性があると推定された.
研究デザイン
- 米国の大規模施設20施設のデータを用いて日中 (朝7時~夕方17時) に外科手術を受けた患者49万8,234名を解析.
- 主要複合アウトカムは院内死亡または重大合併症 (敗血症、 肺炎、 心筋梗塞、 血栓塞栓イベント、 または脳卒中)とした.
- 副次的転帰は、 手術時間、 死亡、 主要合併症、 軽症合併症 (手術部位感染、 尿路感染) の個別転帰とした.
研究結果
- 1,131人の外科医が行った49万8,234件の日帰り手術のうち、 1万30,98件 (2.6%) は前夜に手術を行った主治医が執刀していた.
- 調整後の院内死亡または重大な合併症の発生率は、 昼間の手術で5.89% (95% CI 5.41%-6.36%) であった.
- 同じ外科医が前夜に手術を行った場合:5.89% (5.41-6.36)
- 同じ外科医が前夜に手術を行わなかった場合:5.87% (5.85-5.89)
- (絶対調整差 0.02% 95%CI -0.47~0.51 P=0.93)
- 夜間の執刀と副次的転帰との間には、 手術時間を除き有意な関連は認められなかった.
- 前夜の手術は、 日中の手術時間の有意な短縮と関連していた (調整後の長さ 112.7 vs. 117.4分;調整後の差 -4.7分、 95%CI -8.7~-0.8 P=0.02).
結論
多施設後ろ向き横断的研究の結果、 夜間手術が翌日に同じ外科医が行う手術の転帰の悪化と関連しないことを示唆するものであった.
原著
Sun EC、 et al、 Assessment of Perioperative Outcomes Among Surgeons Who Operated the Night Before. JAMA Intern Med. 2022 May 23;e221563. PMID: 35604661