HOKUTO編集部
3ヶ月前
導入化学療法にて病勢進行 (PD) を認めなかったHR+/HER2+転移乳癌の1次治療として、 CDK4/6阻害薬パルボシクリブ+抗HER2療法+内分泌療法の有効性と安全性を、 抗HER2療法+内分泌療法を対照として比較評価した第Ⅲ相非盲検無作為化比較試験AFT-38 PATINAの結果より、 PFSの有意な改善が示された。 米・Dana-Farber Cancer InstituteのOtto Metzger氏が発表した。
HER2陽性乳癌に対して、 CDK4/6阻害が抗HER2療法への耐性を抑え、 CDK4/6とHER2の同時阻害で相乗的な抗腫瘍活性が示される¹⁾という過去の研究報告に基づいて、 HR+/HER2+転移乳癌を対象に、 抗HER2療法および内分泌療法にパルボシクリブを上乗せした治療レジメンを評価する第Ⅲ相試験AFT-38 PATINAが実施された。
6-8サイクルの導入化学療法とトラスツズマブ±ペルツズマブの併用にて病勢進行 (PD) が認められなかったHR+/HER2+転移乳癌患者518例が、 以下の2群に1 : 1で無作為に割り付けられた。
主要評価項目は、 担当医師評価による無増悪生存期間 (PFS) であった。
重要な副次的評価項目は、 全生存期間 (OS)、 奏効率 (ORR)、 臨床的有用率 (CBR)、 安全性などであった。
ベースライン時の患者背景は両群間で概ね同様であった。 全体の年齢中央値は53.4歳で、 白色人種が91.7%と大多数を占めていた。
導入療法のサイクル数中央値は両群ともに6であった。 ペルツズマブ2剤による抗HER2療法は97.3%で行われ、 アロマターゼ阻害薬による内分泌療法が90.9%で実施された。
術後 (術前) 療法は抗HER2療法が71.8%であり、 導入療法への反応が完全奏効または部分奏効だった割合は68.5%であった。
データカットオフ日を2024年10月15日とした担当医師評価によるPFS中央値は、 対照群の29.1ヵ月(95%CI 23.3-38.6ヵ月)に比べ、 PAL追加群が44.3ヵ月(同 32.4-60.9ヵ月)と有意に改善した(HR 0.74[同0.58-0.94]、 p=0.0074)。
48ヵ月PFS率はPAL追加群が46.9%、 対照群が38.2%、 60ヵ月PFS率はそれぞれ43.2%、 33.4%だった。
また、 PFSのサブグループ解析において、 抗HER2療法による治療歴の有無、 導入療法への反応によらず、 PAL追加群で総じて良好な結果が得られた。
ORRはPAL追加群が29.9%、 対照群が22.2%だった (p=0.046)。 CBRはそれぞれ89.3%、 81.3%で、 同じくPAL追加群で改善がみられた (p=0.01)。
OSはimmatureであった。 OS中間解析において中央値は、 PAL追加群が未到達 (95%CI 71.6ヵ月-NE)、 対照群が77ヵ月 (同 72ヵ月-NE)、 HR 0.86 (同 0.6-1.24)であった。
3年OS率はそれぞれ87.0% (95%CI 82.8-91.2%)、 84.7% (同 80.0-89.3%)、 5年OS率はそれぞれ74.3% (同 67.7-80.9%)、 69.8% (同 62.4-77.2%) であった。
最も多く認められたGrade2以上・10%以上の有害事象(AE)は、 PAL追加群におけるGrade3の好中球減少症(63.2%)であった。 Grade2および3の疲労、 口内炎、 下痢もPAL追加群で多く報告された。
Grade4のAE発現率はPAL追加群が12.3%、 対照群が8.9%で、 両群間に有意差はなかった(p=0.21)。 PAL追加群において治療中止に至った有害事象は14例(7.5%)に認められ、 治療関連の死亡は両群ともに報告がなかった。
Metzger氏は 「HR+/HER2+転移乳癌に対して、 抗HER2療法および内分泌療法にパルボシクリブを上乗せすることで、 PFSは有意に改善した。 新たな安全性シグナルも検出されなかった。 これらの結果より、 パルボシクリブ+抗HER2療法+内分泌療法が新たな標準治療となる可能性が示唆された」 と報告した。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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