海外ジャーナルクラブ
2年前
Mirらは、 化学療法に伴う心毒性を持つ患者を対象に、 心保護剤の有効性と安全性を、 系統的レビューとメタ解析で検討。 その結果、 スタチン、 ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬 (MRA)、 アンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬、 β遮断薬においては化学療法による心毒性を有意に減弱させることが再確認されたが、 アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬 (ARB) については有意な改善が示されなかった。 本研究はCardiooncology誌において発表された。
RCT33件は凄いのですが、 対象患者のガンの種類や化学療法のレジメン、 フォローアップ期間がそれぞれの研究で大きく異なることがlimitationとして挙げられます。
化学療法を受けるがん患者は、 心血管系合併症のリスクが高い。 そのため、 救命のための化学療法を広く行うことができず、 しばしば有効性の低い代替レジメンが必要となったり、 化学療法を完全に断念したりせざるを得ない。 先行研究では、 一般的な心保護剤を使用することで、 化学療法による心毒性が軽減される可能性が示唆されている。 しかし、 サンプル数が少なく、 結果が相反するため、 これらの結果の臨床的意義は限定的である。
化学療法による心毒性患者における心保護剤の効果を検討したランダム化比較試験の文献
スタチン、 MRA、 ACE阻害薬、 ARB、 β遮断薬
左室駆出率 (LVEF)、 臨床的心不全 (HF)、 トロポニン-I、 B型ナトリウム利尿ペプチド (BNP) 値の改善
33件のRCTが含まれ、 3,285例が対象となった。
対照群と比較して、 スピロノラクトンが最もLVEF改善 (MD=12.80) と関係していた。 続いて、 エナラプリル (MD=7.62)、 ネビボロール (MD=7.30)、 スタチン (MD=6.72) という結果になった。
スピロノラクトンはトロポニン上昇の有意な低下とも関係していた (MD=-0.01)
BNPを最も減少させたのはエナラプリル (MD=-49.00) であり、 その次がスピロノラクトン (MD=-16.00) であった。
エナラプリル投与患者は対照群に比べて臨床的HFの発症リスクが最も低かった (RR=0.05)。
スタチン、 MRA、 ACE阻害薬、 β遮断薬が化学療法による心毒性を有意に減弱させることが再確認され、 ARBは有意な効果を示さなかった。 スピロノラクトンは、 LVEFにおいて強固な改善を示し、 この集団における使用を最も支持するものであった。 化学療法剤による治療を受けたがん患者における心臓リモデリング療法の心保護効果を検証するさらなる臨床研究が必要である。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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