Okoshiらは, National Clinical Database (NCD) のデータを基に, 消化器外科医の男女間の短期手術成績を後ろ向きコホート研究で比較. その結果, 消化器外科医の手術の転帰に, 男女差による有意な調整後リスク差はないことが明らかとなった. 本研究は, BMJ誌において発表された.
📘原著論文
Comparison of short term surgical outcomes of male and female gastrointestinal surgeons in Japan: retrospective cohort study. BMJ. 2022 Sep 28;378:e070568.PMID: 36170985
👨⚕️HOKUTO監修医コメント
少し冷静に本研究報告を読む必要がありそうですね. タイトルは, 後ろ向きに比較しました…結論は男女で有意な調整リスクの差はありませんでした. 結果を詳細に見ると男性外科医の方が良い傾向, またその逆の女性外科医の方が良い傾向のサブグループがありそうですね.
研究デザイン
- 対象:幽門側胃切除術, 胃全摘術, 低位前方切除術を施行した男女の外科医.
- 主要評価項目:手術死亡率, 手術死亡率と術後合併症の組み合わせ, 膵液瘻 (遠位胃切除術/胃全摘術のみ) , 吻合部リーク (低位前方切除術のみ) .
研究結果
- 幽門側胃切除術:149,193例 (男性外科医:94.5%, 女性外科医:5.5%)
- 胃切除術:63,417例 (男性外科医:94.5%, 女性外科医:5.5%)
- 前方下部切除:81,593例 (男性外科医:95.4%, 女性外科医:4.6%)
- 平均して, 女性外科医は男性外科医より登録後の年数が少なく, よりリスクの高い患者を手術し, 腹腔鏡手術の数も少なかった.
- 手術死亡率, Clavien-Dindoグレード3以上の合併症を伴う手術死亡率, 膵液瘻, 吻合部リークには男女間で有意差は認められなかった.
- 手術死亡率
- 幽門側胃切除術:aOR 0.98 (95%CI 0.74-1.29) ,
- 胃全摘術:aOR 0.83 (95%CI 0.57-1.19) ,
- 低位前方切除術:aOR 0.56 (95%CI 0.30-1.05) ) ,
- Clavien-Dindoグレード3以上の術後合併症を伴う手術死亡率
- 幽門側胃切除術:aOR 1.03 (95%CI 0.93~1.14) ,
- 胃全摘術:aOR 0.92 (95%CI 0.81~1.05) ,
- 低位前方切除術:aOR 1.02 (95%CI 0.91~1.15) ,
- 膵液瘻
- 幽門側胃切除術:aOR 1.16 (95%CI 0.97-1.38)
- 胃全摘術:aOR 1.02 (95%CI 0.84-1.23)
- 吻合部リーク
- 低位前方切除術:aOR 1.04 (95%CI 0.92-1.18)
結論
本研究では, 消化器外科医が行った手術の転帰に, 男女差による有意な調整後リスク差は認められなかった. デメリットがあるにもかかわらず, 女性外科医は高リスクの患者を引き受けている. 日本では, 女性医師の外科トレーニングへのアクセスを増やすことが正当化される.