寄稿ライター
2ヶ月前

こんにちは、 Dr.Genjohです。 進歩が目覚ましい医療AIですが、 最近では 「経験豊富な医師と比べ、 4倍以上の正診率となった」 という驚くべきニュースが話題となりました。 緊急シリーズ 「医療AIは専門医の職を奪うか?」 の最終回では、 AI時代における医師の生き抜き方について一緒に考えましょう。
ニュースソースは 「The Path to Medical Superintelligence」。
第2回で述べたように、 医療AIは今後我々の立ち位置を大きく揺るがす存在となるでしょう。 ただし、 Microsoftは次のように述べています。
「AIは医者に取って代わるのか?」
AIはヘルスケアの強力なツールになりつつありますが、 私たちの臨床医チームは、 AIが医師やその他の医療専門家を補完するものであると信じています。
医師の臨床的な役割は単に診断を下すだけではありません。 曖昧さを乗り越え、 AIが想定していない方法で患者や家族との信頼を築く必要があります。
臨床医が日常的なタスクをAIによって自動化し、 病気を早期に特定し、 治療計画をパーソナライズし、 一部の病気を完全に予防できる可能性があると考えています。 消費者にとっては、 自己管理と共有された意思決定のためのより良いツールを提供します。

【資料1】は医療関連スタートアップのUbieが2023年に公表した患者満足度アンケートの結果です*¹⁾。 ここからある重要な事実が読み取れます。
患者の満足度を規定する第2位 (医師の診断内容、 57.63%) と、 第3位 (検査・治療内容、 39.83%) は、 いずれもAIによって代替可能な領域です。
ところが、 第1位は 「医師の問診、 診察内容」 (71.91%) です。
つまり、 患者さんにとっては診断や検査・治療が医学的に適切であったか否かよりも、 医師が自分をどう診察してくれるのか、 の重要度が高いわけです。 (だからといって、 不適切な診断・治療をして良いわけではないですが)

「懇ろに悩みや話を聞いてほしい」 「しっかり自分に向き合って診察してほしい」 ――。 こういった患者さんの要望に応えることは、 淡々と質問を投げかけ、 オブラートに包むことなく残酷な病名と治療法を突きつけてくるAIには不可能なことです。
急速にAIが普及した結果、 最後に必要とされるファクターがぬくもりである、 なんて使い古された物語のようですが、 案外それが真実なのかもしれません。

筆者の主観になりますが、 患者さんの問いに対してファジーに応じる能力もまた、 AI時代において求められる要素ではないかと考えます。
先生方はご経験ないでしょうか?チャットボットに表現方法を変えながら質問を繰り返しているのにトンチンカンな答えしか返ってこず、 その挙句 「問題は解決しましたか?」 とドヤ顔をしてくるシステムに怒りを感じたことが…。
結局、 対人相談でしか問題が解決しないことに気付いて電話番号を探しはじめますが、 社員の負荷軽減のために電話番号が秘匿されていて落胆する、 までが最近のルーティーンです……。

これが電子機器の故障程度のことであれば大したことではないでしょう。 しかし、 自分や親族の命や健康が関わってくる医療分野では、 AIが要領を得ない答えを出してきて 「はい、 そうですか」 と納得出来る人は少ないと考えられます。
外科領域において、 疾患の診断や病理判定、 予後予測などにおいてAIの活躍は目覚ましいものがあります。 一方、 自律的な手技に関しては糸結び程度が限度であり、 AIによる手術の自動化はまだ先のようです *²⁾。
また、 循環器内科領域における経皮的冠動脈形成術(いわゆる心カテのステント留置)においても、 AIの利用は画像処理による病変診断のレベルに留まっています。 μm単位でのワイヤー操作を要する心カテ領域においては、 AIがそれを完全に代替することはかなりの困難を伴うであろうと考えます*³⁾。

結論、 手術の術者がAIに駆逐される未来はそう簡単には訪れないでしょう。
医者がAIに駆逐されきらないであろうと私が確信できる理由がこれです。
人の命を預かる以上、 その判断や手技には責任が付きまといます。 仮にAIがどれだけ発達したとしても医療に100%はなく、 誤診や有害事象は必ず発生します。
Microsoftは以下のように述べています。
AIが医師やその他の医療専門家を補完するものであると信じています。 (中略)消費者にとっては、 自己管理と共有された意思決定のためのより良いツールを提供します。
開発者が提示するAIの立ち位置はあくまでサポートツールです。

誤診が発生した時、 AIがその責任を問われるような法律の枠組みにはならないでしょう。 責任を負うのはあくまで人間、 意思決定をした医師と患者さんであることに変わりはありません。
残念ながらその責任を負わされる役割として、 医師という存在は必要不可欠なものとして残り続けるでしょう。
計3回にわたり、 AI時代における医師の生き方を筆者なりに考えてみました。
先生方はどのようにお考えでしょうか?コメント欄などでご意見を頂戴できれば幸いです。
*¹⁾ Ubie : 患者1,000人の声で解き明かす!選ばれる“かかりつけ”クリニックの共通点 (2023/8/22)
*²⁾ Cureus : Future of Artificial Intelligence in Surgery: A Narrative Review (2024/1/4)
*³⁾JSCAI : Artificial Intelligence in Intravascular Imaging for Percutaneous Coronary Interventions: A New Era of Precision - Journal of the Society for Cardiovascular Angiography & Interventions (2025/4/21)

Xアカウント : @DrGenjoh

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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