診療指針
3ヶ月前
心筋炎および心膜炎の管理に関するESCガイドライン2025. 欧州心臓病学会 (European Society of Cardiology ; ESC)
欧州心臓病学会 (ESC) は、 心筋炎および心膜炎の管理に関する2025年版の新ガイドラインを発表した。 このガイドラインは、 これらの疾患の診断、 治療、 フォローアップに関する最新のエビデンスに基づいた推奨事項を提供するものである。 本ガイドラインはEuropean Heart Journal誌で発表された。
約90ページにも及ぶガイドラインです。 心膜炎 (pericarditis) に関するガイドラインはこれまで2回公表されてきましたが、 心筋炎 (myocarditis) については今回、 初めてガイドラインで取り上げられました。
本ガイドラインにおける最大の変革は、 心筋炎と心膜炎を包括する 「IMPS: Inflammatory Myopericardial Syndrome (編集部訳 炎症性心筋心膜症) 」 という概念の導入である。
これは、 心筋と心膜の炎症がしばしば連続・重複する病態であることを反映しており、 診断から治療決定、 フォローアップに至るケアパス (CarePathway) の基盤となる包括的枠組みとして定義された。
▼急性心膜炎の診断
発症から4週間未満を急性心膜炎と定義する。 診断には、 特徴的な胸膜性胸痛に加え、 以下の追加基準のうち1つ以上が必要とされる。
▼心筋炎の診断
非侵襲的診断法として、 心臓MRIが推奨度Bで強く推奨されている。 診断には 「2018年改訂版 Lake Louise Criteria」 を用い、 T1強調画像 (浮腫・線維化を示唆) とT2強調画像 (活動性炎症・浮腫を示唆) の双方の所見 (いわゆるone T1-based and one T2-based criterion) を認めることが確診の要件となる。
確定診断のための心内膜心筋生検 (EMB) は、 血行動態が不安定なハイリスク症例等において推奨度Cで推奨される。 組織学的診断基準として、 白血球数≧14/mm²かつCD3陽性T細胞≧7/mm²という定量的な閾値が明記された。
患者のトリアージにおいて、 以下のリスク因子の有無を評価し、 治療方針を決定することが必須である。
▼心膜炎の主要リスク因子
予後不良を示唆する因子として、 38℃を超える発熱、 亜急性発症、 20mmを超える多量の心膜液貯留、 心タンポナーデの合併、 およびアスピリンやNSAIDsによる初期治療への反応不良が挙げられる。
▼心筋炎のハイリスク基準
心不全症状、 心原性ショック、 心室性不整脈、 あるいは高度房室ブロックを認める場合、 ハイリスク群と定義される。 これらに該当する場合、 ICU入室および高度なモニタリング体制が必要となる。 なお、 持続的なトロポニン上昇は中間リスク (Intermediate risk) に分類され、 入院または厳重な経過観察と病因検索が推奨される 。
▼急性心膜炎の第一選択
アスピリンおよびコルヒチンが標準治療である
▼再発性・難治性心膜炎
第一選択薬やステロイドで効果不十分、 かつCRP上昇を伴う再発性心膜炎に対しては、 IL-1受容体拮抗薬であるアナキンラ (Anakinra) の使用が推奨度Aで推奨される。
▼心筋炎の治療
左室機能不全を伴う場合は、 ガイドラインに基づく標準的な心不全治療 (GDMT) の導入が必要である。
▼非薬物療法 (運動制限)
IMPSの全症例 (アスリートおよび非アスリートを含む) において、 臨床的寛解 (Remission) が得られるまで、 少なくとも1ヵ月間の運動制限 (Restriction of physical exercise) を行うことが推奨度Cで規定されている。
退院後の管理として、 特に心筋炎診断後の患者においては、 発症から6ヵ月時点での再評価がケアパスに組み込まれている。 これにはCMRの再検が含まれ、 炎症の完全な消退や、 予後に関連する線維化の残存を確認することが強く推奨される。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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