ファーストインクラスのロジックゲート型CAR NK細胞療法がR/R AMLに有望:SENTI-202
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HOKUTO編集部

8日前

ファーストインクラスのロジックゲート型CAR NK細胞療法がR/R AMLに有望:SENTI-202

ファーストインクラスのロジックゲート型CAR NK細胞療法がR/R AMLに有望:SENTI-202
再発/難治性 (R/R) の急性骨髄性白血病 (AML) において、 ロジックゲートを組み込んだ既製品 (Off-the-Shelf) のCAR NK細胞製剤SENTI-202の用量設定と安全性を検証した第I相試験SENTI-202-101の中間解析結果より、 複合完全寛解* (cCR) 率は57%と有望な有効性を示し、 忍容性は良好だった。 米・SCRI at TriStar Bone Marrow TransplantのStephen A. Strickland氏が発表した。
*完全寛解 (CR)、 部分的血液学的回復を伴う完全寛解 (CRh)、 好中球未回復の完全寛解 (CRi) を含む

背景

異常細胞を攻撃し、 HSC/HSPCを保護する新規CAR-NK細胞療法の開発

R/R AMLは予後不良であり、 有効な新規治療法の開発が求められている。 SENTI-202は、 AML芽球、 白血病幹細胞 (LSCs) に発現するCD33またはFLT3を認識し、 いずれかが発現していれば標的タンパクを 「殺傷」 し (ORゲート)、 その一方で造血幹前駆細胞 (HSPCs) 細胞に発現するエンドムシン (EMCN) を認識して正常造血幹細胞 (HSCs) や正常造血幹前駆細胞 (HSPCs) を 「保護」 する (NOTゲート) ように設計された、 OR/NOTロジックゲート型のCAR-NK細胞療法である。

試験の概要

対象は再発/難治性血液悪性腫瘍、 今回はAMLの中間解析を実施

本試験の対象は、 ❶R/RのCD33および/またはFLT3陽性の血液悪性腫瘍、 ❷1~3ラインの前治療歴があるR/R AML、 ❸1~2ラインの前治療歴がある芽球増加を伴うR/R 骨髄異形成症候群 (MDS) であり、 今回は❷のR/R AML 9例を対象にSENTI-202を投与した中間解析結果 (データカットオフ : 2025年4月7日) が報告された。

最大耐量と推奨第Ⅱ相用量を評価

試験の主要目的は安全性、 最大耐量 (MTD)、 第II相推奨用量 (RP2D) の評価だった。 用量規定毒性 (DLT) は、 Grade3以上の非血液毒性、 Grade4の好中球減少または血小板減少の長期化と定義された。

その他の目的は、 欧州白血病ネット (ELN) 2022基準に基づく担当医評価による有効性、 局所的評価による分子的残存病変 (MRD)、 薬物動態 (PK)、 骨髄検体を用いたCyTOF(cytometry by time of flight)の評価による薬物力学 (PDn) だった。

試験の結果

用量×投与スケジュールからRP2Dを設定

予備的RP2Dコホートの決定にあたり、 用量は細胞数1×10⁹ (レベル1) と1.5×10⁹ (レベル2) が設定された。 また、 投与スケジュールはリンパ球除去療法 (フルダラビン+シタラビン) 後の0、 7、 14日目にSENTI-202を投与する 「スケジュール1 (28日サイクル) 」 と、 0、 3、 7、 10、 14日目に投与する 「スケジュール2 (28日サイクル) 」 が設定された。

用量とスケジュールの組み合わせで3コホート (各3例) が組まれ、 用量レベル1+スケジュール1、 用量レベル2+スケジュール1、 用量レベル1+スケジュール2のいずれにおいてもDLTが認められないことが確認された。 これらの結果より、 用量レベル2+スケジュール1の3例が予備的RP2Dコホートに設定された。

大多数がベネトクラクス治療歴あり

今回解析されたAML患者9例の年齢中央値は63歳(範囲26-72歳)、 男性67%、 AML診断からの期間中央値は0.75年(同 0.3-6.2年)、 ベースライン時の骨髄芽球の割合中央値が30%(同 10-93%)、 ベースライン時の血小板数<50×10⁹/Lが44%だった。

前治療ライン数中央値は2(同 1-3)で、 全例が前治療としてフルダラビンまたはシタラビンを含む化学療法を受けており、 78%がベネトクラクスの治療歴を有していた。

有害事象での治療中止例なし

3コホートのいずれにおいても、 SENTI-202の治療サイクル中央値は2サイクルだった。 大多数の患者はcCR達成後にSENTI-202の投与を中止しており、 有害事象 (AE) を理由に中止した患者はいなかった。

cCR率57%、 cCR達成の全例がMRD陰性

全患者における客観的奏効率 (ORR) は71%、 cCR率は57%で、 cCRを達成した4例全例がMRD陰性だった。 データカットオフ時点で4例全例がcCRを維持していた。 また予備的RP2DコホートのcCR率は67%だった。 なお奏効期間中央値は未達だった。

cCR達成患者ではLSCs≦1/10まで減少

9例中8例でベースラインから最良効果までの骨髄芽球割合の減少が認められた。

Ki67およびIdU解析では、 ベースライン時のLSCsが主にG0期であり、 化学療法の感受性が低い状態であることが示唆された。 さらに、 CyTOFを用いて骨髄単核細胞から49種類のタンパク質を同定したところ、 SENTI-202によりcCRを達成した全患者で、 LSCsが10分の1以下まで減少していた。

HSPCsは温存・回復、 SENTI-202の作用機序を裏付け

cCRを達成した患者において、 末梢血球数は迅速に回復した。 好中球数 ≥0.5および1.0×10⁹/Lへ回復するまでの期間中央値は21日で、 血小板数 ≥50×10⁹/Lおよび100×10⁹/Lへ回復するまでの期間中央値はそれぞれ28日/35日だった。

また骨髄検体のCyTOF解析では、 骨髄中のHSPCsは維持または増加しており、 SENTI-202がLSCsのみを選択的に殺傷し、 HSPCsは温存・回復させるというロジックゲート設計に基づく作用機序が裏付けられた。

薬物動態は他の同種NK細胞治療と同様

SENTI-202のPKプロファイルは同種のNK細胞治療と一致していた。 またcCR達成の有無や用量に関わらず、 体内動態に有意差は認めなかった。

忍容性は良好

試験中に確認されたGrade3/4のAEは主に血液系であり、 SENTI-202との関連はなく、 リンパ球除去療法後のR/R AMLと一致する症状だった。 2例以上で報告された重篤なAEはなく、 用量レベル1/2間で、 AE発現に有意な差は認めなかった。

低GradeのAEとしては、 Grade1の発熱3例、 低血圧1例、 低酸素血症1例を認めたが、 いずれもSENTI-202投与後1日以内に発症し、 サイトカイン放出症候群 (CRS) と報告され、 標準治療で速やかに改善した。

その他の治療関連AEやDLTは報告されなかった。

結論

ファーストインクラスのCAR NK細胞療法として有望

Strickland氏は 「SENTI-202は、 選択的にCD33またはFLT3を標的とし、 EMCNを除外する、 ファーストインクラスのロジックゲート型Off-the-Shelf CAR NK細胞製剤であり、 忍容性は良好だった。 本試験ではMTDには到達せず、 RP2Dは『1.5×10⁹細胞/回を7日毎に3回、 28日サイクルで投与』と同定された。 用量設定は現在進行中であり、 スケジュール2のコホートからの追加データが今後報告される予定である」 と報告した。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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