HOKUTO編集部
10日前
持続性または慢性の免疫性血小板減少症 (ITP) の成人患者に対する経口BTK阻害薬 rilzabrutinibの有効性および安全性をプラセボを対照に検証した第Ⅲ相プラセボ対照二重盲検無作為化比較試験LUNA 3の結果より、 rilzabrutinibは迅速かつ持続的な血小板反応を示し、 身体的疲労や出血リスク等の安全性やQOL面でも改善を示した。 米・Massachusetts General Hospital, Harvard Medical SchoolのDavid J. Kuter氏が発表した。
可逆的共有結合型の経口BTK阻害薬であるrilzabrutinibは、 さまざまな免疫介在性疾患に対する治療薬となる可能性が期待されている。 ITPに対するrilzabrutinibを検討した第Ⅰ/Ⅱ相試験LUNA 2の結果では、 同薬の良好な安全性と、 迅速かつ持続的な血小板反応が示された¹⁾。
今回報告されたのは、 LUNA 3試験の対象のうち18才以上の成人患者の結果であり、 小児患者に対する検証は現在試験継続中である。
対象は、 免疫グロブリン静注 (IVIg) 療法、 抗D抗体、 または副腎皮質ステロイドの投与歴はあるが効果が持続せず、 血小板数 <30x10⁹/Lの適格基準を満たす患者とされた。 副腎皮質ステロイドおよびまたはトロンボポエチン受容体作動薬 (TRO-RA) の併用は許容された。
202例はrilzabrutinib群 (133例)、 プラセボ群 (69例) の2群に2 : 1で無作為に割り付けられ、 二重盲検治療期間 (12~24週間) にrilzabrutinib 400mgもしくはプラセボの1日2回経口投与を受けた後、 適格であれば28週間の非盲検のrilzabrutinib投与を受けた。 その後は4週間の安全性観察期間に移行、 もしくは長期のrilzabrutinib継続投与試験に参加した。
13週時点で血小板反応 (血小板数 ≧50x10⁹/L、 または血小板数 ≧30-<50x10⁹/Lでベースラインから倍増) が認められない患者は、 治療中断もしくは非盲検のrilzabrutinib投与段階へ進むことが許容された。
これにより、 rilzabrutinib群55例、 プラセボ群55例が早期に非盲検のrilzabrutinib投与段階へ進み、 rilzabrutinib群62例、 プラセボ群10例が24週の盲検治療を完了した。
主要評価である持続的な血小板反応は、 24週間の盲検投与期間中に救済療法が行われず、 後半12週間のうち8週間以上にわたり血小板数 ≧50x10⁹/Lであった患者の割合として算出された。
副次評価項目には、 以下が設定された。
年齢、 性別などの患者背景は両群間で概ねバランスが取れていた。rilzabrutinib群 / プラセボ群のITP治療期間の中央値は8.1年 / 6.2年で、 ベースラインの血小板数中央値は両群ともに15x10⁹/Lだった。 両群とも28%で脾臓摘出術歴があり、 TPO-RA投与歴は66% / 74%だった。
持続的な血小板反応率は、 rilzabrutinib群で23% (31例) と、 プラセボ群の0% (0例) に比べ有意に改善した (p<0.0001)。 非盲検のrilzabrutinib投与期間後の評価を合わせると、 持続的な血小板反応率はrilzabrutinib群の29% (38例) が達成していた。 さらに、 非盲検のrilzabrutinib投与を行ったプラセボ群の患者60例を含めた193例では25%に持続的な反応が認められた。
血小板数の推移を見ると、 rilzabrutinib投与に反応した集団では、 反応は早期~24週まで持続的に現れ、 25週以降の長期投与で時間経過とともにさらなる改善が認められた。 また24週までにrilzabrutinib投与に反応しなかった集団においても、 長期投与を行うことで血小板数の改善傾向が見られた。 プラセボ群ではrilzabrutinib投与に切り替え後、 血小板数の上昇が示された。
血小板反応までの時間
初期の血小板反応 (血小板数 ≧50x10⁹/L、 または血小板数 ≧30-<50x10⁹/Lでベースラインから倍増) は、 rilzabrutinib群の65%、 プラセボ群の33%で示された。 反応があった患者のうち、 最初の血小板反応までの期間中央値はそれぞれ15日、 50日だった。 血小板反応の持続期間の中央値は、 プラセボ群の2週に対しrilzabrutinib群が12週と良好な結果であった(p<0.0001)。
救済療法の実施率
IVIgや血小板輸血等の救済療法の実施率はrilzabrutinib群で少なく、 救済療法の必要性を52%減少させた (p=0.0007)。 また、 25週時点での出血スコアのベースラインからの平均変化 (SE) は、 rilzabrutinib群が-0.04 (0.02)、 プラセボ群が0.05 (0.02) だった (p=0.0006)。
身体的疲労への有効性
ITP-PAQに基づき評価した13週時点の身体的疲労のベースラインからの平均変化 (SE) は、 rilzabrutinib群でプラセボ群と比較し有意な改善が示された(7.95 [2.13] vs -0.13 [2.86]、 p=0.01)。
ほとんどの有害事象 (AE) の発現はGrade1/2であり、 全GradeのAE・Grade3以上のAE、 Grade2以上の感染症等の発現率に、 群間差はほぼ認められなかった。 Grade2以上の出血イベントは、 rilzabrutinib群で少なかった。
Kuter氏は 「持続性または慢性の成人ITPにおいて、 rilzabrutinibは迅速かつ持続的な血小板反応を示し、 QOLを改善させ、 ITPの治療が難しい成人患者においても良好な忍容性が認められた」 と報告した。
¹⁾ N Engl J Med. 2022 Apr; 386(15):1421-1431.
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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