Prosthetic Joint Infections due to Candida Species: A Multicenter International Study
研究デザインと研究対象
- ヨーロッパ7ヵ国、 合計19の病院が参加した多施設後ろ向きコホート研究である。
- 2021年のEuropean Bone and Joint Infection Society (EBJIS) の診断基準に基づき、 カンジダが2つ以上の手術中のサンプル、 あるいは生検・インプラント培養・穿刺培養から同定された場合と定義された。
- 「治癒」 は、 2年間のフォローアップ期間中に発熱や疼痛などの症状や炎症反応の徴候が認められないものと定義された。
主な結果
- 合計269人が対象 (免疫不全患者は10.8%)。
- PJIは、 股関節53%、 膝関節43%に発症し、 瘻孔形成は34%に見られた。
- DAIR (debridement, antibiotics, and implant retention) が36%、 1-stageが28%、 2-stageが29%であった。
- 治療はアゾール系抗真菌薬が76%、 エキノキャンディンが31%であり、 治療期間の中央値は92日 (IQR 54.5-181.3) で、 58%が臨床的に治癒が得られた。
- 治療失敗の関連因子は70歳以上の高齢とDAIRによる治療であった。 Candida parapsilosisによる感染は予後良好の関連因子であった。
- 治療成功の割合はDAIRと1-stageで有意に差があり、 1-stageと2-stageには有意差が見られなかった。
稀ではあるものの、 エビデンスが乏しいカンジダ人工関節感染に関するこれまでの報告の中で最も大規模なデータであり、 臨床的なマネジメントの参考となる多くの要素が含まれています。
米国ではほとんど行われない1-stageの治療方針が、 ヨーロッパで盛んに行われています。 本研究では人工関節の温存が予後不良因子であるため抜去が望ましいとされていますが、 1-stageと2-stageの治療方針に有意差は認められませんでした。
治療期間に関して、 人工関節を抜去した場合には米国感染症学会 (IDSA) のガイドラインでは最低3ヵ月の抗真菌薬が推奨されています。 他のいくつかの研究では6~12ヵ月が推奨されていますが、 本研究では治療期間の中央値は約3ヵ月であり、 治療期間と治療失敗との有意な関連は認められませんでした。 しかし、 いまだ定められた見解はなく、 個々の症例ごとに慎重に検討する必要があります。
監修医師 : 松尾 貴公先生
2011年 長崎大学医学部卒業、 聖路加国際病院初期研修・内科専門研修・内科チーフレジデント・感染症科フェロー・医員を経て2021年 テキサス大学ヒューストン校/MDアンダーソンがんセンターにて臨床留学。 2022年 同チーフフェロー、 2023年 同アドバンストフェロー、 2024年よりメイヨークリニック感染症科の整形外科感染症フェローとして骨関節感染症に特化したトレーニングを行い更なる研鑽を積んでいる。 また、 日本チーフレジデント協会 (JACRA) 世話人を経て、 現在日本感染症教育研究会 (IDATEN) KANSEN JOURNAL編集委員・米国感染症学会 (IDSA) 感染症教育推進委員。 2024年2月よりFebrile Podcast ID Digital Institute (IDDI)のメンバーも務めており、 デジタルデバイスを活用した新しい感染症教育に積極的に取り組んでいる。
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