海外ジャーナルクラブ
1年前
Lieslehtoらは、 境界性パーソナリティ障害 (BPD) の患者を対象に、 薬物療法と自殺未遂、 自殺既遂との関連をコホート研究で検討。 その結果、 注意欠陥・多動性障害 (ADHD) 治療藥の使用が自殺リスクの低下と関連する一方で、 ベンゾジアゼピン系薬剤は自殺リスクの上昇と関連していた。 本研究はJAMA Netw Open誌において発表された。
観察研究なのでなぜこれらの薬剤が投与されたのか、 indication(臨床医の意図)は不明です。 RCTで証明すべき大変興味深い仮説です。
境界性パーソナリティ障害 (BPD) 患者において、 自殺行動は臨床上重要な関心事であるが、 自殺リスクの低減に対する薬物療法の有効性は不明なままである。
2006~2021年の間にBPDの治療を受けた16~65歳の患者:2万2,601例
自殺未遂または自殺既遂のHR
ADHD治療薬は、 非使用群と比較して、 自殺未遂または自殺完了のリスクの低下と関連していた。
気分安定薬による治療は、 主要アウトカムと統計的に有意な関連を示さなかった。
抗うつ薬 (HR 1.38、 95%CI 1.25-1.53、 FDR補正のP<0.001) および抗精神病薬 (HR 1.18、 95%CI 1.07-1.30、 FDR補正のP<0.001) による治療は自殺未遂または既遂のリスク上昇と関連していた。
検討した薬物療法のうち、 ベンゾジアゼピン系薬による治療は、 自殺未遂または自殺既遂の最も高いリスクと関連していた。
これらの結果は、 因果の逆転などのバイアスを調整した解析においても同様であった。
BPD患者の自殺行動のリスク低減と関連する薬物療法はADHD薬のみであり、 逆に、 ベンゾジアゼピン系薬剤は自殺のリスク増加と関連するため、 BPD患者においては慎重に使用すべきである。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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