HOKUTO通信
2年前
塩野義製薬の新型コロナウイルス感染症の飲み薬 「ゾコーバ」が、 3回の審議を経てようやく緊急承認された。 11月末から医療現場への供給が始まるが、 エビデンスを疑問視する声があるほか、 併用できない薬が多く、 利用が進むか未知数な部分もある。
既に国内承認されている飲み薬は、 米メルクのモルヌピラビル、 米ファイザーのパキロビッドの2種類。 これらは重症化リスクのある人などに投与対象が限定されているのに対し、 ゾコーバは重症化リスクの有無に関わらず軽症や中等症の患者に使用できるのが特徴だ。
政府は塩野義と100万人分の購入契約を結んでいる。 新型コロナの 「第8波」 への懸念が高まる中、 治療の選択肢を広げる初の国産経口薬への期待は医療現場でも大きい。
ただ、 利用がどれだけ進むか見通せない部分もある。 実際、 パキロビッドは政府が200万人分を確保したが、 服用条件が複雑なことなどから6万人弱の利用にとどまっている。 ゾコーバも妊婦は併用禁忌で、 飲み合わせに注意が必要な薬が36種類と多い。
これらの懸念に対し、 厚労省は 「重症化リスクの因子がない人が対象になることから、 他の薬を服用している患者が少なく、 使い勝手の悪さが解消される面もある」 との見解を示す。
そもそも医療関係者の中には、重症化リスクのない人に抗ウイルス薬を投与することへの慎重論もある。
日本感染症学会は、 自然に治ることが多い重症化リスクのない軽症者に対しては 「症状を考慮した上で投与を判断すべきだ」 と治療のガイドラインに追加する方針。例えば、高熱、 強いせき症状などがある患者への処方を検討するとしている。
緊急承認のエビデンスとなる治験の結果にも賛否両論がある。 塩野義は当初、 疲労感など12症状の総合的な改善効果を見ていた。 だが、 7 月の専門部会で継続審議になった後、発熱や鼻水など5症状に絞り込んだ。 これ自体を不適切とする医療関係者もいる。
5症状の消失が24時間早くなるというデータについて 「大した効果ではない」 との評価もある。22日に審議した厚労省の専門部会では有効性に疑問を呈し、 承認を反対する意見もあった。
緊急承認制度は1年の期限付き。 期限内に有効性が確認されなければ承認は取り消される。 服用には、 評価が割れている点や一定の条件下で認められた薬であることも、 患者に説明する必要があるだろう。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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