メイヨークリニック感染症科 松尾貴公
6ヶ月前
Minocycline-Induced Cutaneous Hyperpigmentation in an Orthopedic Patient Population
研究デザイン
後ろ向きコホート研究
研究期間
2002年1月~2011年12月
対象
整形外科感染症 (人工関節感染症や慢性骨・関節感染症) で、 3ヵ月以上のミノサイクリン療法を受けた患者291例。
収集データ
患者背景 (年齢、 性別、 人種)、 感染部位、 微生物学的データ、 色素沈着の発生状況と治療経過
患者背景
対象患者の平均年齢は65.7歳で、 男性が51%であった。 人種は白人が96.2%、 アフリカ系アメリカ人が1.0%、 その他の人種が1.6%であった。
微生物学的データ
メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌 (46%)、 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (23%) が多かった。
色素沈着の発生率
対象患者の54% (156例) がミノサイクリンによる色素沈着を発症した。 このうち89%がType II で、 28%の患者は複数のタイプ (Type IとIIの組み合わせなど) を呈していた。
なお、 発症までの平均期間は1.5年 (範囲0.1–9年) で、 累積投与量の中央値は107.3gであった。
感染部位と特徴
膝 (32%) や股関節 (29%)、 椎体 (20%) への感染が多かった。
Type IIの色素沈着は主に下肢 (75%)、 上肢 (44%)、 顔 (38%) に発生していた。 非皮膚部位にも色素沈着がみられ、 歯 (4.4%)、 爪 (3.6%)、 強膜 (2.9%) に影響があった。
リスク因子
ビタミンD欠乏は相対リスク (RR) 6.29 (95%CI 1.91–15.27、 p=0.0052) と特に高いリスク因子であった。 肩プロステーシスの存在もRR 3.2 (95% CI 1.23–6.56、 p=0.0062) と関連していた。
さらに、 非肝硬変性肝疾患 (RR 3.63、 p=0.0359) や色素沈着を引き起こす併用薬の使用 (RR 4.75、 p=0.0029) も重要なリスク因子であった。
色素沈着後の治療継続
色素沈着を経験した患者の56%は治療を継続し、 44%は治療を中止した。 治療中止後も24%の患者では色素沈着が完全に解消されず、 症状軽減には平均1.2年を要していた。
整形外科関連の感染症に関わらず、 長期ミノサイクリン治療では皮膚色素沈着が高頻度で発生する可能性があります。
累積投与量を抑えることや治療期間の最適化を図ることはいうまでもありませんが、 長期で使用しなければならない場合には、 治療開始前に十分な説明を行うことが推奨されます。
大半の患者は、 ミノサイクリン終了後に皮膚の色素沈着が改善します。 しかし、 本研究では治療中止後も約1/4の患者では色素沈着が完全に解消されなかったこと、 また、 症状軽減には平均1.2年を要していたことも重要な結果です。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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