Gaudinskiらは、 抗マラリアモノクローナル抗体 CIS43LSの安全性と薬物動態、 マラリア原虫の感染に対する有効性を2部構成の第Ⅰ相臨床試験で検討。 その結果、 CIS43LSの投与は、 コントロールされたマラリア感染を予防することができた。 本研究は、 NEJM誌において発表された。
📘原著論文
A Monoclonal Antibody for Malaria Prevention. N Engl J Med. 2021 Aug 26;385(9):803-814.PMID: 34379916
👨⚕️HOKUTO監修医コメント
マラリアに対するpassive preventionの活路を見出したという意味で大変意義のある研究です。 N数が少ないですし、 静脈投与のみの評価なのでその部分はlimitationとなります。
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背景
マラリアによる罹患率と死亡率を低減するために、 さらなる介入が必要である。
研究デザイン
パートA
- 対象:マラリアにかかったことのない健康な成人
- CIS43LSの安全性、 初期副作用プロファイル、 薬物動態を評価。
- 3段階の投与量 (1kgあたり5mg、 20mg、 40mg) のCIS43LSのうち1つを皮下または静脈内投与された。
パートB
- Part AのサブグループはPart Bに継続し、 一部参加者は2回目のCIS43LSの投与を受けた。 追加の参加者もパートBに登録され、 CIS43LSの静脈内投与を受けた。
- 投与4~36週後にP. falciparumを保有する媒介蚊に曝露させ、 CIS43LSのマラリア感染予防効果を評価した。
研究結果
- 25名の参加者が体重1kgあたり5mg、 20mg、 40mgのCIS43LSを投与され、 その内の4名が2回目の投与を受けた (初回投与にかかわらず1kgあたり20mg)。
- 安全性に関する懸念は確認されなかった。
- CIS43LSの血清濃度は用量依存的に上昇し、 半減期は56日であることが確認された。 ヒトマラリア感染後21日までのPCR検査の結果、 CIS43LSを投与された9名の参加者には寄生虫血症は認められなかったが、 CIS43LSを投与されなかった対照群6名のうち5名には寄生虫血症が確認された。
- CIS43LSを1kgあたり40mg投与され、 約36週間後にヒトマラリアに曝露させた2名には寄生虫血症が認められず、 CIS43LSの血清濃度はそれぞれ46μg/mLおよび57μg/mLであった。
結論
マラリア感染やワクチン接種の経験がない成人において、 CIS43LSの投与はコントロールされたマラリア感染を予防することができた。