海外ジャーナルクラブ
1年前
Thomらは、 米国の医療機関13部門の医療従事者を対象に、 非滅菌手袋着用前の手指衛生の有効性を、 多施設クラスター無作為化比較試験を含む混合法による研究で検討した。 その結果、 手袋着用前の手指衛生を指示した群に比べ、 手指衛生の有無を問わずに手袋着用を指示した群の方が、 感染予防実践の遵守率や手袋の着用率が高かった。 本研究はJAMA Netw Open誌において発表された。
現行のガイドライン (医療界の常識) と違うやり方の方がアウトカムが良いという報告です。 大切なことはすぐにこの結果の良し悪しを判断せず、 月日がこの研究結果の良し悪しをよりクリアにしてくれるのでそれを待つのが正解と思います。 ワインのように少し結果を寝かすことが大切です。
現在のガイドラインでは、 非滅菌手袋を着用する前に手指衛生を行うことが求められているが、 有効性に関するエビデンスは不足している。
米国の医療機関13部門の医療従事者:3,790例
参加者を以下の群に無作為に割り付けた。
隔離室入退室時の感染予防実践の遵守率
隔離室入室時の手袋着用率、 全ての部屋の入退室時の手指衛生の遵守率
感染予防実践の遵守率は、 通常ケア群より直接手袋着用群で有意に高かった。
p<0.001
ベースライン時の手指衛生の有無、 組織の特徴などを調整後も結果は同様だった。
リスク比 (RR) :1.76 (95%CI 1.58-1.97)
隔離室入室時の手袋着用率
隔離室入室時の手袋着用率も直接手袋着用群で有意に高かった。
p=0.008
非隔離室への入退室時の感染予防実践の遵守
非隔離室への入退室時の感染予防実践遵守に両群間の差はなかった。
入室時
RR:1.00 (95%CI 0.91-1.10、 p=0.94)
退室時
RR:0.98 (95%CI 0.91-1.07、 p=0.71)
診療科ごとの細菌検出率、 細菌コロニー数の解析
救急部門
救急部門における手袋からの細菌検出率は、 通常ケア群に比べ直接手袋着用群で有意に高かった。
調整後RR:10.18 (95%CI 2.13-44.94)
細菌コロニー数も直接手袋着用群で有意に高かった。
調整後RR:7.13 (95%CI 3.95-12.85)
小児科部門
小児科部門の細菌コロニー数は、 通常ケア群に比べ直接手袋着用群で有意に少なかった。
調整後RR:0.34、 95%CI 0.19-0.63
その他の部門
その他の部門においては両群間に差はなかった。
現行のガイドラインでは、 非滅菌手袋を着用する前に手指衛生を行うことが求められているが、 この要件を支持する証拠は不足している。 本試験の結果は、 事前の手指衛生なしに直接手袋を着用する方針について検討すべきであることを示唆している
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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