HOKUTO通信
2ヶ月前

厚生労働省は、 病院や診療所における医師や看護師などの給与情報について、 職種別の開示を義務付ける方向での検討を開始する。 民間医療法人の経営情報を集約するデータベースへの報告を想定している。
この方針は2025年末に行われた2026年度予算案を巡る閣僚折衝で合意された。 厚生労働省の資料には 「職種別の給与・人数の報告の義務化を含め、 報告のあり方や内容について検討し。 2026年中に必要な見直しについて結論を得る」 と明記された*¹⁾。
想定されているのは、 独立行政法人福祉医療機構が運営する医療法人の経営情報データベース (MCDB) への報告だ。 MCDBでは2023年から、 医療法人に対し、 病院や診療所ごとの収益や費用の報告を義務付けている*²⁾ 。 新型コロナ禍での補助金による経営への影響を把握する狙いなどがあった。

一方、 職種別の給与・賞与や人数については任意報告となっている。 そのため厚労省は、 医師や看護師などの1人当たりの賃金水準を正確に把握することが難しいと認識している。 「診療報酬の適正な配分や処遇改善につなげる観点から、 データの精緻化が必要」 との主張だ。
職種別の給与水準については、 既存調査では診療報酬改定の基礎資料として厚生労働省が実施している 「医療経済実態調査」 のデータがある。 ただ、 任意回答のサンプル調査であることから、 動向を継続的に把握する手法としては制約がある。
このため厚労省は2022年以降、 MCDBの報告項目のあり方について、 医療関係者や有識者による検討会で議論を続けている*³⁾。 給与情報の開示義務化についても、 検討会で具体的な制度設計が議論される見通し。
政府は、 2026年度の診療報酬改定において、 人件費に回る本体部分について平均3.09%引き上げを決めている。 賃上げ原資が現場に実際に届いているかを確認する仕組みづくりは、 今後の制度運用における一つの論点といえる。
これに対し日本医師会はこれまで、 小規模な医療法人では特定の職種が1人のみとなるケースがあり、 個人情報の特定につながる懸念を指摘している。 給与情報が診療報酬引き下げ圧力につながる警戒感も根強い。 給与データの可視化による事務負担の増加なども懸念事項として挙げられており、 制度設計の行方が注目される。
*¹⁾ 厚生労働省 : 中央社会保険医療協議会 総会 (第639回) 総-1令和8年度診療報酬改定の改定率等について (2025/12/26)
*²⁾ 厚生労働省 : 医療法人に関する情報の調査及び分析等について
*³⁾ 厚生労働省 : 医療法人の経営情報のデータベースの在り方に関する検討会

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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