がん遺伝子パネル検査の課題と方向性を探る 「注目の2シンポジウム」 : JSMO 2025
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HOKUTO編集部

23日前

がん遺伝子パネル検査の課題と方向性を探る 「注目の2シンポジウム」 : JSMO 2025

がん遺伝子パネル検査の課題と方向性を探る 「注目の2シンポジウム」 : JSMO 2025
2025年3月6~8日に神戸市で開催される第22回日本臨床腫瘍学会学術集会 (JSMO 2025) を控え、 2月13日にプレスセミナーが都内で開催された。 同セミナーでは、 京都大学大学院腫瘍内科学講座教授である武藤学氏が登壇し、 同学会で取り上げられる包括的がんゲノムプロファイリング (CGP) に関する演題について紹介があった。 これらはいずれも保険適応の制約や検査タイミングなどの課題を議論し、 ゲノム医療の今後を左右する重要な内容である。 以下では、 JSMO 2025の注目プログラムや、 CGP検査に関する注目トピックについて、 武藤氏のコメントを交えて紹介する。

注目の2シンポジウム

❶ ゲノム医療で推奨された保険適応外薬をどのように使うか

3月6日(木)14:00~15:30 第2会場にて、 武藤学氏と織田克利氏 (東京大学大学院 統合ゲノム学) が司会を務める。 基調講演では 「がんゲノム医療時代における薬剤アクセスの課題」 を池田貞勝氏(東京科学大学)が解説する。

その他の演者は以下の通りである。

がん遺伝子パネル検査の課題と方向性を探る 「注目の2シンポジウム」 : JSMO 2025

👨‍⚕️武藤氏の解説

CGP検査は2019年6月に保険適用となり、 以来5年半で9万4,000人ほどが検査を受けている。 しかし、 治療に結びつく割合は医療機関にもよよるがいまだ10%以下と報告されている。 日本では、 保険適応外薬を用いる際の混合診療の制限や手続きの煩雑さが大きなハードルとなっている。

武藤氏は 「現状の国内では、エキスパートパネルにおいて承認薬の保険適用外使用の提案が日常的に行われているが、 我が国の保険制度上、 実際に薬剤を提供することは困難である。 また欧米では1症例ごとでも申請できるコンパッショネート・ユース (Single Patient IND) のような制度もない。 そのため小児がんや希少がんでは、 適応拡大を待てずに患者が不利益を被るケースもある。 こうした問題点の共有と解決策の議論は非常に意義深い」 と述べた。

❷ がん遺伝子パネル検査は1次治療開始前に実施するべきか

3月8日(土)14:00~15:30 第2会場にて、 馬場英司氏(九州大学大学院医学研究院 連携腫瘍学)と武藤学氏が司会を務める。 こちらでは、 固形がん患者における初回治療時のCGP検査の有用性や、 標準治療前のパネル検査に関する先進医療のフォローアップなどが発表される予定である。

その他の演者と主な内容は以下の通りである。

がん遺伝子パネル検査の課題と方向性を探る 「注目の2シンポジウム」 : JSMO 2025

👨‍⚕️武藤氏の解説

武藤氏は 「日本では標準治療終了後にCGPを行うのが一般的だが、 患者の全身状態が悪化してからでは選択肢を活かせない可能性が高い。 海外のように1次治療の段階からパネル検査を行い、 適切なタイミングで精密医療を取り入れることが大切である」 と述べた。

さらに 「実臨床でのデータを蓄積し、 標準治療前に検査を行った場合のアウトカムが明確になれば、 保険収載の見直しや混合診療への対応も前向きに進むのではないか」 と期待を示した。

今後の方向性

ゲノム医療はわが国のがん診療における新たな柱となる一方、 保険適応や混合診療の制限による制約など課題は山積している。 今回の学術集会では、 保険制度と先端医療をどのように両立させるか、 早期検査導入をどこまで拡充できるかなどの議論が注目される。 武藤氏は 「革新的な治療を現場へ届けるには、 実データを基にした制度改革の議論が欠かせない。 それを進めるうえで、 本学会のシンポジウムが大きな足掛かりになることを期待したい」 とコメントした。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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