【DESTINY-Breast06】HR陽性HER2低発現の化学療法未治療乳癌へのT-DXdでPFS延長
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HOKUTO編集部

3ヶ月前

【DESTINY-Breast06】HR陽性HER2低発現の化学療法未治療乳癌へのT-DXdでPFS延長

【DESTINY-Breast06】HR陽性HER2低発現の化学療法未治療乳癌へのT-DXdでPFS延長
HR陽性かつHER2低発現/超低発現で内分泌療法既治療・化学療法未治療の進行乳癌患者における抗HER2抗体薬物複合体T-DXdの有効性および安全性について、 化学療法を対照に検証した第Ⅲ相国際共同無作為化比較試験DESTINY-Breast06の結果より、 PFSの有意な延長が示された。 イタリア・European Institute of OncologyのGiuseppe Curigliano氏が発表した。 

T-DXdは早期ライン投与でも有効か

化学療法歴を有するHER2低発現の進行乳癌を対象としたDESTINY-Breast04試験¹⁾において、 トラスツズマブ デルクスカン (T-DXd) はHER2低発現 (IHC 1+または2+/ISH-) 患者の予後改善効果を示したことから、 現在同薬は化学療法1ライン以上の治療歴があるHER2低発現転移性乳癌に対して承認されている。

DESTINY-Breast06試験では、 内分泌療法後に病勢進行を認めたHER2低発現/超低発現かつホルモン受容体 (HR) 陽性の転移性乳癌で、 転移病変に対する化学療法歴がない患者を対象に、 T-DXdの有効性が評価された。

主要評価はHER2低発現例のPFS

対象

内分泌療法およびCDK4/6阻害薬による1次治療で6ヵ月以内に病勢進行した、 または複数の内分泌療法による前治療を受け、 化学療法未治療のHR陽性かつHER2低発現*または超低発現**の再発または転移性乳癌患者

*IHC 1+または2+、 ISH- **IHC 0

介入

866例を以下の2群に1 : 1の割合で無作為に割り付けた。

  • T-DXd群 : 436例
(T-DXd 5.4mg/kgを3週毎に投与)
  • TPC群 : 430例
(カペシタビン、 nab-パクリタキセル、 パクリタキセルから担当医が選択して投与)

評価項目

主要評価項目

盲検独立中央判定(BICR)評価によるHER2低発現患者の無増悪生存期間 (PFS)

主な副次的評価項目

BICR評価による全患者のPFS、 HER2低発現患者の全生存期間 (OS)、 全患者 (ITT集団) のOS

mPFSは13.2ヵ月、増悪リスクを37%低減

患者背景

  • HER2低発現:713例
  • HER2超低発現:153例
  • 年齢中央値 (ITT集団、 HER2低発現集団) : いずれも57.0~58.0歳
  • ECOG PS 0 (ITT集団、 HER2低発現集団) : 57.8~59.8%、 57.7~61.6%
  • TPC群での内訳 : カペシタビン59.8%、 nab-パクリタキセル24.4%、 パクリタキセル15.8%

治療状況

追跡期間中央値18.2ヵ月時点*での治療継続割合

  • T-DXd群 : 20.5%(89例)
  • TPC群 : 7.2%(30例)
*データカットオフ日 : 2024年3月18日

治療期間中央値

  • T-DXd群:11.0ヵ月(範囲0.4-39.6ヵ月)
  • TPC群:5.6ヵ月(同0.1-35.9ヵ月)
TPC群の17.9%は、 試験治療中止後にT-DXd治療を受けた(TPC群HER2低発現患者の20.1%)。

主要評価項目

HER2低発現集団のPFS中央値

  • T-DXd群 : 13.2ヵ月
  • TPC群 : 8.1ヵ月
ハザード比 0.62 (95%CI 0.51-0.74)、 p<0.0001

サブグループ解析

事前に規定された全てのサブグループにおいて、 T-DXd群のTPC群に対する優位性が一貫して認められた。

副次評価項目

今回はOS率 (12ヵ月時) の中間解析の結果が報告された。 データカットオフ時点でのイベント発生数は、 HER2低発現患者で282件、 ITT集団で335件、 maturityは40%未満だった。

12ヵ月時OS率

  • T-DXd群 : 87.6%
  • TPC群 : 81.7%
ハザード比 0.83 (95%CI 0.66-1.05)、 p=0.1181

ORR

【HER2低発現集団のORR】

  • T-DXd群 : 56.5%
  • TPC群 : 32.2%

【ITT集団のORR】

  • T-DXd群 : 57.3%
  • TPC群 : 31.2%

DOR

【HER2低発現集団のDOR】

  • T-DXd群 : 14.1ヵ月
  • TPC群 : 8.6ヵ月

ITT集団のDOR

  • T-DXd群 : 14.3ヵ月
  • TPC群 : 8.6ヵ月

探索的評価

HER2超低発現集団のPFS中央値

  • T-DXd群 : 13.2ヵ月
  • TPC群 : 8.3ヵ月
ハザード比 0.78 (95%CI 0.50-1.21) 

HER2超低発現集団の12ヵ月時OS率

  • T-DXd群 : 84.0%
  • TPC群 : 78.7%
ハザード比 0.75 (95%CI 0.43-1.29) 

HER2超低発現集団のORR

  • T-DXd群 : 61.8%
  • TPC群 : 26.3%

安全性評価

Grade3以上の治療関連有害事象 (AE) 発現率

  • T-DXd群 : 40.6%
  • TPC群 : 31.4%

重篤なAE発現率

  • T-DXd群 : 20.3%
  • TPC群 : 16.1%

治療中止に至ったAE発現率

  • T-DXd群 : 14.3%
  • TPC群 : 9.4%

投与薬の減量に至ったAE発現率

  • T-DXd群 : 24.7%
  • TPC群 : 38.6%

死亡に至った治療関連AE発現率

  • T-DXd群 : 1.2%
  • TPC群 : 0%

間質性肺疾患はT-DXd群の11.3%に発現した。 ただし、 Grade3/4に該当するのは0.7%、 Grade5は0.7%だった。

T-DXdによる早期治療の実現に期待

Curigliano氏は 「HR陽性かつHER2低発現/超低発現で内分泌療法既治療・化学療法未治療の進行乳癌患者において、 T-DXd投与はTPCと比較し、 統計学的に有意かつ臨床的に意義のあるPFSの改善を示した。 新たな安全性シグナルは検出されなかった。 本試験の結果は、 同患者に対する効果的かつ新しい治療選択肢として、 T-DXd を確立させ得るものである」 と報告した。


出典

1) N Engl J Med. 2022 Jul 7;387(1):9-20.

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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