医師会の3%賃上げ要求は実現するか
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HOKUTO通信

11ヶ月前

医師会の3%賃上げ要求は実現するか

医師会の3%賃上げ要求は実現するか
記者会見をする松本吉郎・日本医師会会長 ( 画像中央、 YouTubeの日本医師会公式チャンネルから)
物価高騰でモノやサービスの値上げが相次ぐ中、 国が決める公定価格で運営している医療機関は価格転嫁できず取り残されているとして、 日本医師会が政府に対策を求める声明を出した。 果たして実現するのだろうか。

実現すれば平均43万円の年収増

声明は今月10日付で、 日本歯科医師会と日本薬剤師会の連名。日本医師会の松本吉郎会長は記者会見で、 「政府には何らかの財政措置を強くお願いしたい」と述べた。 具体的には 「3%の賃上げ」 を目安に、 今年度内の緊急的な助成金や2024年のトリプル改定での対応を求めている。

厚生労働省の 「令和4年賃金構造基本統計調査」 によると、 医師の平均年収は約1430万円。 医師の3%賃上げが実現すれば、 約43万円の収入増となる。 全国の医師数34万人で、 政府としては単純計算で1462億円の財政措置が必要になる計算だ

診療報酬本体部分は8回連続プラスだが…

実現の可能性について、 医療関係者には 「医師会の賃上げ要求は無理ゲー」 (都内の医師) と冷めた見方も多い。 2年に1回改定される診療報酬の本体部分は2008年から2022年まで、 8回連続でプラス改定になっているが 「プラス改定だったから医師の給与を増やしましょうという話を聞いたことがない」 からだ。

医師会の3%賃上げ要求は実現するか

一般のマスメディアでは 「診療報酬のプラス改定=医師の給与増」 と結びつける報道も多い。 ただ、 実際は診療報酬の本体部分がプラスとなり医療機関の収入が増えても、 医師の昇給に充てられるのは一部に過ぎないことはご存知の通りだ。

看護職については2022年、 コロナ患者を受け入れる医療機関の看護職員を中心に賃金を3%程度 (月平均1万2000円相当) 引き上げることを目的とした補助制度が作られた。 ただ、 これはコロナ禍で、 相対的に給与水準が低い看護職員の離職が相次ぎ、 患者の受け入れに支障が出たことへの緊急対応という側面があった

光熱費の高騰対策に充てられる?

次に、 政府の財政措置が実現しても、 「高騰する光熱費や医療材料費の補填などが先だろう」 との意見もある。 日本医師会は今年4月、 光熱費の高騰が診療所の経営に与える影響について実態調査の結果を発表。 2022年10月〜12月の光熱費は前年同期に比べ、 無床診療所で約3万8000円増 (32.2%増)、 有床診療所で21万8000円増(46.3%増)になっていることを明らかにした。

7割を超える診療所が 「経営に影響がある」 と回答し、 日本医師会は 「地方創生臨時交付金の積み増しで物価高騰への補助が行われてはいるものの、 不十分」 として財政措置を求めている。

医師会の3%賃上げ要求は実現するか

全国医学部長病院長会議が4月に公表した調査結果でも、 全国の大学病院のうち回答のあった75病院の医療材料費と光熱水費の合計額は、 2023年度見込みで5055億円。 2021年度実績の4268億円と比べると、 787億円(18.4%)増加。 1病院当たりでは10.5億円の負担増になっている計算だ。

介護職などが優先される?

一方、厚労省関係者は「 診療報酬はいつも政治判断で決着がつくから正直分からない」 とした上で 「看護職と同様に離職が深刻な介護職などが優先されるのでは」 と推測する。 介護関係の11団体も今年5月、 一般企業と同程度の賃上げが出来ず異業種への人材流出を招いているとして、政府に財政措置を要望している。

ある医師は 「医師だって給与は上がってほしい。 医師会は政権与党とべったりなくせに、肝心な時に役に立たない」 とこぼした。

参考資料

こちらの記事の監修医師
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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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