仲野 兼司(がん研有明病院 総合腫瘍科)
3ヶ月前
免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) やBRAF/MEK阻害薬の登場以降、 悪性黒色腫の治療成績は飛躍的に改善しました。 本稿では、 悪性黒色腫の薬物療法において押さえておくべき最新のトピックをまとめて紹介します。
ICI黎明期に実施されたCheckMate 067試験の10年解析により、 ニボルマブ+イピリムマブ併用療法によって長期生存が得られる可能性が明確になりました。
🔹 CheckMate 067試験
10年全生存率 (OS率) : ニボルマブ+イピリムマブ併用群 37%、 ニボルマブ単剤群 26%、 イピリムマブ単剤群 16%
BRAF変異陽性例に対しては、 ICIを先行する治療シークエンスが、 BRAF/MEK阻害薬を先行する場合と比べて長期生存の観点で優れていることが第II相および第III相試験で示されています。
また、 BRAF/MEK阻害薬とICIの3剤併用療法も検証されていますが、 生存期間を有意に延長する効果は確認されていません。
🔹 DREAMseq試験
2年OS率 : ニボルマブ+イピリムマブ先行群 71.8%、 ダブラフェニブ+トラメチニブ先行群 51.5%
🔹 SECOMBIT試験
4年OS率および60ヵ月間の脳転移抑制効果は、 エンコラフェニブ+ビニメチニブ先行群と比較して、 ニボルマブ+イピリムマブ先行群で良好であることが報告されています。
🔹 IMspire150試験
抗PD-L1抗体アテゾリズマブの追加は、 ベムラフェニブ+cobimetinib療法に対するOS延長効果を示しませんでした。
🔹 STARBOARD試験
安全性リードインでは、 エンコラフェニブ+ビニメチニブ+ペムブロリズマブ療法は良好な安全性と高い奏効率を示しました。
周術期治療として、 III期に対してはICI (ニボルマブ、 ペムブロリズマブ)、 BRAF変異陽性例にはBRAF/MEK阻害薬 (ダブラフェニブ・トラメチニブ併用) が承認されています。 近年、 IIB/C期に対するICIの有効性も示され、 日本でもニボルマブとペムブロリズマブの適応が拡大されました。
さらに、 III期以上の局所進行例では、 術前にICIを導入することで、 術後にICI単独で治療を行う場合と比べて予後が改善する可能性が報告されています。
🔹 CheckMate 76K試験 (IIB/C期術後)
12ヵ月無再発生存率 : ニボルマブ群 89%、 プラセボ群 79%
🔹 KEYNOTE-716試験 (IIB/C期術後)
3年遠隔転移無発生存率 : ペムブロリズマブ群 84.4%、 プラセボ群 74.7%
🔹 SWOG S1801試験 (III/IV期術前)
2年無イベント生存率 : 術前+術後ペムブロリズマブ群 72%、 術後単独ペムブロリズマブ群 49%
🔹 NeoACTIVATE試験 (III期術前)
Cobimetinib+アテゾリズマブ (±ベムラフェニブ) による術前治療は、 良好な遠隔転移抑制効果を示しました。
抗CTLA-4抗体や抗PD-1/PD-L1抗体に続く新たな免疫療法の標的として、 LAG-3 (Lymphocyte-activation gene 3) が注目されています。 T細胞の疲弊に関与するこの受容体を阻害することで、 抗腫瘍免疫の再活性化が期待されます。
LAG-3阻害薬relatlimabは、 ニボルマブとの併用により、 有効性と安全性のバランスに優れた治療選択肢となる可能性が示されています。
🔹 RELATIVITY-047試験
3年OS率 : ニボルマブ+relatlimab併用群 54.6%、 ニボルマブ群 48.0%
ニボルマブ+イピリムマブ併用療法との間接比較では、 全体として同等の有効性と、 より良好な安全性が報告されていますが、 結果の解釈には慎重さが求められます。
今後、 日本でrelatlimabが承認された際には、 イピリムマブとの使い分けが実臨床での検討課題となることが予想されます。
🔹 CheckMate 067との間接比較試験
第III相比較試験ILLUMINATE-301では、 イピリムマブ単剤と比較して、 Toll様受容体9作動薬tilsotolimodの腫瘍内投与併用は、 客観的奏効率およびOSの有意な改善を示しませんでした。
🔹 ILLUMINATE-301試験
HLA-A*02:01陽性のぶどう膜黒色腫において、 糖タンパク100 (gp100) とCD3を標的とするT細胞受容体二重特異性分子tebentafuspが予後の延長に寄与することが示されました。
🔹 IMCgp100-202試験
3年OS率 : tebentafusp群 27%、 医師選択治療群 18%
2025年に改訂された本ガイドラインは、 ICIや分子標的薬など新規薬物療法の進展を踏まえ、 最新のエビデンスに基づく悪性黒色腫診療の指針が提示されています。 皮膚原発以外を含む悪性黒色腫全般を対象とし、 東アジア人に特有のエビデンスも考慮されています。
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📚 海外ジャーナルクラブ
専門 : 腫瘍内科 (骨軟部腫瘍、 頭頸部腫瘍、 原発不明癌、 希少がん、 その他がん薬物療法全般)
一言 : がん薬物療法に関する論文を中心に、 勉強した内容を記事にしています。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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