HOKUTO編集部
2年前
国内で行われた大規模な多施設共同第Ⅱ相ランダム化比較試験DEEPER(JACCRO CC-13)では、 RAS 野生型かつ切除不能な進行・再発大腸癌がんの一次療法において、 modified (m)- FOLFOXIRI療法に対して抗EGFR抗体セツキシマブを併用する群(Cet群) の有効性および安全性について、 従来の標準的治療であるm- FOLFOXIRI+抗VEGF抗体ベバシズマブ併用療法(Bev群) を対照に検討。
JSMO 2023では、 主要評価項目である最大腫瘍縮小率 (DpR)、 副次的評価項目の無増悪生存期間 (PFS) のアップデート解析に加え、 注目されていたもう一つの副次的評価項目である全生存期間 (OS) の結果が世界に先駆けて公表された。 香川大学臨床腫瘍学講座教授の辻晃仁氏が発表した。
RAS野生型 (321例)
P=0.68 HR 0.94 (0.71〜1.26)
RAS/BRAF野生型 (269例)
P=0.091 HR 0.67 (0.42〜1.07)
左側かつ RAS/BRAF 野生型 (131例)
P=0.020 HR 0.54 (0.32〜0.91)
Cet の最も高い治療効果が期待される左側かつ RAS/BRAF 野生型の集団では、 OS中央値が4年超という、 かつて報告されたことがない良好な成績が示され、 統計学的にもCet群のBev群に対する有意な延長が認められた。
これまでのベバシズマブ vs. セツキシマブの試験同様にOSで有意差がありながら、本試験ではさらにPFSでも有意差があった。左側RAS/BRAF野生型のOS中央値は両群ともに40カ月を超え、セツキシマブ併用に至っては53.6カ月であった。
試験毎の患者背景が異なるなかで、中央値を比較するのはナンセンスだが、同じく日本で行われたPARADIGM試験(抗EGFR抗体パニツムマブ併用化学療法 vs. ベバシズマブ併用化学療法)の治療成績を上回る結果である。高度に選択された患者においては、良好な成績が期待できることは示された。
しかしパニツムマブ併用時におけるdoublet vs. tripletであるTRIPLETE試験¹⁾では、tripletとの併用の有効性が示されておらず、海外ガイドラインでは左側RAS/BRAF野生型に対しdoublet+抗EGFR抗体が推奨されている。一方、DEEPER試験で用いられた同じく抗EGFR抗体であるセツキシマブ併用時のdoublet vs. tripletの比較は行われていない。国内ガイドラインでどのように扱われるか、気になるところである。
また個人的にはPARADIGM試験のバイオマーカー解析で、化学療法+抗EGFR抗体のより有効な対象を選別できていることがわかったものの、その社会実装が出来ていないことの方が問題は大きいと考えている。今後はバイオマーカーによる選別や、tripletの最適な対象という観点での選別を期待したい。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。