Kramerらは, 持続的ウイルス学的奏効 (SVR) を達成したC型肝炎ウイルス感染症 (HCV) 患者を対象に, 肝細胞癌 (HCC) 発症の危険因子を後ろ向きコホート研究で検討. その結果, HCCのリスク因子は肝硬変の有無により異なり, 一部は経時的に変化することが明らかとなった. 本研究は, Am J Gastroenterol誌において発表された.
📘原著論文
Longitudinal associations of risk factors and hepatocellular cancer in patients with cured hepatitis C virus infection. Am J Gastroenterol. 2022 Aug 23. Online ahead of print.
👨⚕️HOKUTO監修医コメント
非常にシンプルかつ分かりやすい研究です. 同定されたリスク因子には, 介入可能な因子が多数ありますので, HCCサーベイランスのみならず今後の実臨床応用に期待したいです. 本研究デザインはシンプルですので, 鋳型研究として他の領域に応用が可能です.
背景
ウイルス学的に治癒したHCV患者におけるHCCの危険因子の影響と進展に関するデータは限られている.
研究デザイン
- 対象: SVRを達成したHCV患者
- Cox比例ハザードモデルを用いて, ベースライン, SVR後12カ月, 24カ月の3つの時点で解析.
- 肝硬変の状態によって層別し, 人口統計学的, 臨床的, 行動的因子とHCCリスクの関連性を検討.
研究結果
- 平均2.5年の追跡期間中に92,567名の患者 (32%が肝硬変) のうち, 3,247名のHCCが診断された.
- 肝硬変患者におけるHCCリスク因子
- 男性:HR 1.89, 1.93, 1.99
- 肝硬変期間5年以上:HR:1.71, 1.79, 1.34
- 静脈瘤:HR:1.73, 1.60, 1.56
- ベースラインのアルブミン値:HR:0.48, 0.47, 0.49
- アルブミン値の変化:HR:0.82, 0.90
- HCV genotype 3, 治療歴, ビリルビン値, 喫煙, 人種は, ベースライン時のHCC危険因子だったが, 時間経過とともにその影響は減弱した.
- 肝硬変のない患者では, 糖尿病 (HR:1.54, 1.42, 1.47) および高血圧 (HR:1.59, 1.65, 1.74) は, すべてのランドマーク時刻でHCCリスクと関連していた.
- FIB-4スコアの経時的変化は, 肝硬変のある患者とない患者の両方で, HCCリスクと関連していた.
結論
HCCのリスク因子は, 肝硬変のある患者とない患者で異なっており, 一部は追跡調査中に変化した. これらの因子は, HCVが治癒した患者におけるリスク層別化とHCCサーベイランスの決定に役立つと思われる.