転移・再発病変に対する治療歴のない、 転移または切除不能な局所進行性のトリプルネガティブ乳癌患者において、 アテゾリズマブとnabパクリタキセル (Nab-PTX) の併用療法の効果を、 プラセボ+Nab-PTXを対照に検証した第Ⅲ相二重盲検ランダム化比較試験IMpassion130の結果より、 無増悪生存期間 (PFS) に対する有効性が示された。
原著論文
▼中間解析結果
tezolizumab and Nab-Paclitaxel in Advanced Triple-Negative Breast Cancer. N Engl J Med. 2018 Nov 29;379(22):2108-2121. PMID: 30345906
▼追跡結果
Atezolizumab plus nab-paclitaxel as first-line treatment for unresectable, locally advanced or metastatic triple-negative breast cancer (IMpassion130): updated efficacy results from a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial. Lancet Oncol. 2020 Jan;21(1):44-59. PMID: 31786121
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IMpassion130試験の概要
対象
転移・再発病変に対する治療歴のない、 転移または切除不能な局所進行性のトリプルネガティブ乳癌患者
方法
902例を以下の2群に1:1で割り付けた
- アテゾリズマブ群 (451例、 PD-L1陽性*患者185例)
アテゾリズマブ840mgをday1,15に投与+Nab-PTX100mg/m²をday1,8,15に投与。28日サイクル
- プラセボ群 (451例、 PD-L1陽性*患者184例)
プラセボをday1,15に投与+Nab-PTX100mg/m²をday1,8,15に投与。 28日サイクル
*PD-L1陽性:腫瘍面積に対する腫瘍浸潤免疫細胞のPD-L1発現の割合が1%以上
評価項目
主要評価項目
- PFS (全患者、 PD-L1陽性患者)
- 全生存期間:OS (全患者、 PD-L1陽性患者)
副次評価項目
IMpassion130試験の結果
患者背景
両群で同様であった。
- 年齢 (中央値):55~56歳
- 女性:99.3~99.8%
- アジア人:16.9~18.8%
追跡期間 (中央値)
- アテゾリズマブ群:18.5ヵ月
- プラセボ群:17.5ヵ月
OS中央値
全患者
(95%CI 19.0-22.6ヵ月)
(95%CI 16.9-20.3ヵ月)
HR 0.86 (95%CI 0.72-1.02)、 p=0.078
PD-L1陽性患者
(95%CI 19.6-30.7ヵ月)
(95%CI 13.6-20.1ヵ月)
HR 0.71 (95%CI 0.54-0.94)
PD-L1陰性患者
(95%CI 16.3-21.6ヵ月)
(95%CI 16.9-22.2ヵ月)
HR 0.97 (95%CI 0.78-1.20)
OS率 (24ヵ月時)
全患者
(95%CI 37.3-47.4%)
(95%CI 33.7-43.6%)
PD-L1陽性患者
(95%CI 42.9-58.5%)
(95%CI 29.0-44.9%)
PFS中央値
全患者
(95%CI 5.6-7.4ヵ月)
(95%CI 5.3-5.6ヵ月)
HR 0.80 (95%CI 0.69-0.92)、 p=0.0021
PD-L1陽性患者
(95%CI 6.7-9.2ヵ月)
(95%CI 3.8-5.6ヵ月)
HR 0.63 (95%CI 0.50-0.80)、 p<0.0001
PD-L1陰性患者
(95%CI 5.5-7.3ヵ月)
(95%CI 5.4-7.3ヵ月)
HR 0.93 (95%Cl 0.77-1.11)
PFS率
全患者 (24ヵ月時)
(95%CI 7-13%)
(95%CI 4-9%)
PD-L1陽性患者 (12ヵ月時、 24ヵ月時)
- アテゾリズマブ群:30.3%、 12.4%
- プラセボ群:17.3%、 7.4%
ORR
全患者
(95%CI 51.3-60.6%)
(95%CI 41.2-50.6%)
p=0.002
PD-L1陽性患者
(95%CI 51.5-66.1%)
(95%CI 35.4-50.1%)
p=0.002
DOR中央値
全患者
(95%CI 6.9-9.0ヵ月)
(95%CI 5.5-6.9ヵ月)
HR 0.78 (95%CI 0.63-0.98)
PD-L1陽性患者
(95%CI 7.3-9.7ヵ月)
(95%CI 3.7-7.1ヵ月)
HR 0.60 (95%CI 0.43-0.86)
有害事象 (AE)
治療関連AEの発現率 (グレード3-4、 グレード5)
- アテゾリズマブ群:40%、 <1%
- プラセボ群:30%、 <1%
著者らの結論
転移または切除不能な局所進行性のトリプルネガティブ乳癌患者において、 全患者集団・PD-L1陽性患者のいずれにおいても、 アテゾリズマブ群はプラセボ群と比較し、 PFSの有意な延長を認めた。 OSに関しては、 PD-L1陽性患者において、 アテゾリズマブ群で臨床的に意義のある延長効果を示すことが示唆された。