HOKUTO編集部
9ヶ月前
本連載は4人の腫瘍内科医による共同企画です。 がん診療専門医でない方でもちょっとしたヒントが得られるようなエッセンスをお届けします。 第9回は虎の門病院・三浦裕司先生からです! ぜひご一読ください。
医師になったばかりの頃、 受け持ちの患者さんが亡くなった時のショックはかなり大きなものでした。 しかしその時に、 周りの先輩医療者がされた反応とのギャップに戸惑いを覚えました。 そのような経験を皆さんもお持ちかもしれません。
腫瘍内科医は日常的に患者さんの“死”に接している職種であり、 知らず知らずのうちに死に対する感覚が麻痺しているのではないかと心配になることがよくあります。 一方で、 死の過程を経験・理解していることで、 患者さんの不安を解消する手助けになることもあります。
上図は、 日本人がどこで最期を迎えているのかについて示したものです。 1975年頃は、 自宅で亡くなる方と病院で亡くなる方が半々くらいの割合でした。 しかし、 それ以降徐々に病院での死を迎える方の割合が多くなり、 1990年頃には、 約80%が病院でお亡くなりになる時代になってきました。
このデータが意味することは、 現在75歳くらいの人達でも、 身近なご家族を病院で看取っており、 人がどのように最期を迎えるのかという実体験が少ない可能性があるということです。
👨🦳患者さん
「先生、 この先私はどうなるんでしょう?やっぱり最期は痛いんですか?」
人は知らないことに対して恐怖を感じます。 それが“死”という潜在的に恐怖をもたらすものであればなおさらです。 そのため、 患者さんからは 「この先どうなるのでしょうか?」 「最期は痛みなどで苦しむのでしょうか?」 と尋ねられることが多くあります。
👨⚕️医師
「症状が出ても、 緩和治療をしっかりやっていきますので安心してください」
がん患者さんは、 その経過中にさまざまな症状が生じることがあります。
国立がん研究センターが2018年に行ったがん患者さんの遺族に対する調査によると、 「痛みが少なく過ごせた」 割合は51.8%、 「身体の苦痛が少なく過ごせた」 割合は48.1%、 「穏やかな気持ちで過ごせた」 割合は52.6%と報告されています¹⁾。 まだまだ改善の余地が残る数値だとは思いますが、 約半分の人は大きな苦痛を感じることなく過ごせているという結果です。
「症状が出ても緩和治療をしっかりと行い、 適切に対応していくので安心してくださいね」 と患者さんにお伝えしておくことが、 大事なことだと思います。
多くの場合、 週~早い月の単位で少しずつ元気がなくなっていき、 この時期にだんだんと、 食事を求めない、 横になりがち、 眠りがちなどの変化が現れるようになります。 この過程は、 体が自然に苦痛を取り除くための反応です。
💬腫瘍内科医のTips
この反応を 「体が徐々に死の準備を始める時期」 と説明することもあります。
そして、 日から早い週の単位で、 眠るように最期を迎えることになります。
個々の患者さんでその経過は異なるため、 断定的なことは言えません。 しかし、 一般的な経過を理解して、 説明してあげることで、 患者さんの不安を取り除き、 落ち着いて自分らしい最期の時を過ごすための助けになることもあると思います。
¹⁾ 国立がん研究センター. “がん患者の人生の最終段階における苦痛や療養状況に関する 初めての全国的な実態調査の結果を公表”. 2018年12月26日(https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2018/1226/index.html). (2024年2月29日閲覧)
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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