未治療の転移性膵癌において、 modified FOLFIRINOXレジメン (mFOLFIRINOX) の効果を検証した単群コホートの第II相試験の結果より、 mFOLFIRINOXレジメンは、 予防的G-CSFを使用せず、 有効性を維持したまま安全性を改善させることが示された。
原著論文
▼解析結果
A phase II study of modified FOLFIRINOX for chemotherapy-naïve patients with metastatic pancreatic cancer. Cancer Chemother Pharmacol. 2018 Jun;81(6):1017-1023. PMID: 29633005
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第Ⅱ相試験の概要
対象
未治療の転移性膵癌
方法
- 69例を2週毎のmFOLFIRINOXレジメンで治療した。
オキサリプラチン85mg/m²+ロイコボリン200mg/m²+イリノテカン150mg/m²+フルオロウラシル2400mg/m²⁾ (46時間かけて持続静注)
フルオロウラシルのボーラス投与は省略
- 全例に嘔吐予防としてパロノセトロン、 アプレピタント、 デキサメタゾンが定期的に投与された。
- 一次予防としてG-CSFの投与は行わなかった。
評価項目
- 主要評価項目:全生存期間 (OS) 、 Grade3以上の好中球減少症の発生率
- 副次評価項目:無増悪生存期間 (PFS) 、 奏効率 (ORR、 病勢コントロール率) 、 安全性
第Ⅱ相試験の結果
患者背景
- 年齢中央値:62.6歳
- PS 0:68.1%
- 腫瘍の原発部位が膵頭部:44.9%
治療について
- 治療サイクル数の中央値は8サイクル
- 投与量の減量と治療の遅延が発生したのは、 79.7%。 減量および治療遅延の原因として最も頻度が高かったのは、 好中球減少症であった。
- 治療中止の主な理由は、 病勢進行 (67.7%) と有害事象 (20%) であった。
OS中央値
11.2ヵ月
(95%CI 9.0ヵ月-)
OS率 (1年時)
48.1%
(95%CI 36.1-60.1%)
PFS中央値
5.5ヵ月
(95%CI 4.1-6.7ヵ月)
PFS率 (1年時)
21%
(95%CI 11.2-30.7%)
ORR
37.7%
(95%CI 26.3-50.2%)
病勢コントロール率
78.3%
(95%CI 66.7-87.3%)
ORRと病勢コントロール率は、 FOLFIRINOX治療を受けたヒストリカルコントロール群の患者の奏効率と有意差はなかった。
奏効期間 (中央値)
167日
有害事象 (AE)
- Grade3-4のAEは71%に発現した。 主なGrade3-4の血液学的毒性は好中球減少症 (47.8%) 、 白血球減少症 (29%) 、 貧血 (4.3%) であった。
- 発熱性好中球減少症の発生率は8.7%であった。 Grade3-4の好中球減少症 (47.8 vs 77.8%) および発熱性好中球減少症 (8.7 vs 22.2%) の発生率は、 標準的なFOLFIRINOXレジメンで治療された日本の歴史的試験と比較して、 mFOLFIRINOXレジメンで有意に減少した。
- G-CSFが投与された患者は18%のみであった。
Grade3-4の主な非血液毒性
食欲不振 (15.9%) 、 下痢 (10.1%) 、 疲労 (4.3%) 、 悪心 (8.7%) 、 胆管炎 (8.7%) 、 血栓塞栓症 (4.1%) 、 末梢神経障害 (5.8%)
著者らの結論
未治療の転移性膵癌においてmFOLFIRINOXレジメンは、 予防的G-CSFを使用せずに、 有効性を維持したまま、 安全性を改善することが示された。