2022年1月21日、 厚生労働省はトシリズマブ (アクテムラ®︎)のCOVID-19に対する薬事承認を行いました.
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HOKUTO編集部

2年前

2022年1月21日、 厚生労働省はトシリズマブ (アクテムラ®︎)のCOVID-19に対する薬事承認を行いました.

2022年1月21日、 厚生労働省はトシリズマブ (アクテムラ®︎)のCOVID-19に対する薬事承認を行いました.
2022年1月21日、 厚生労働省は抗IL-6受容体モノクローナル抗体であるトシリズマブ (商品名:アクテムラ) のCOVID-19に対する薬事承認を行いました. 適応は「酸素投与を要するSARS-CoV-2肺炎」となっており、中等症Ⅱ〜重症患者に対する使用が見込まれます.

背景

トシリズマブは、もともと関節リウマチ成人Still病若年性特発性関節炎などの自己免疫疾患の治療に使用される薬剤です. その強力な炎症抑制作用を応用し、 重症またはそれに準じるCOVID-19患者に対し、 我が国でも一部の施設で投与されてきました.

呼吸不全を伴うCOVID-19に対して有効である可能性がありますが、 いかに述べるような使用上の注意点があるため、 経験ある医師の指導の元で投与がすすめられます.

根拠論文

2020年末にNew England Journal of Medicineに掲載されたランダム化二重盲検プラセボ対照試験においては、当初トシリズマブはCOVID-19患者が人工呼吸器を必要とする割合や死亡率を低下させないとされていました¹⁾. しかしその後、さらに多くの母数を対象とした臨床試験の報告が相次ぎました.

  1. 米国で行われた第3相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、 呼吸不全を有する (CPAP、BiPAPを含む人工呼吸器を使用している患者は除外) COVID-19入院患者389人がトシリズマブ使用群とプラセボ群=2:1に割り付けられた. トシリズマブ使用群で人工呼吸器の使用に至るリスクが有意に減少したが、 全体死亡率に有意差を認めなかった²⁾.
  2. 英国で4,000人を超える母集団を対象として行われたRECOVERY試験では、トシリズマブ投与群で死亡率、 および気管挿管に至る可能性が有意に減少し、 退院までの日数が有意に短縮した³⁾.
  3. 侵襲的人工呼吸管理を要する154人の患者をトシリズマブ投与群と非投与群=1:1に分けたところ、 他の病原体との重複感染が有意に増えた (54%vs26%)ものの、 死亡率を45%減少させた⁴⁾.

これ以外にも、トシリズマブが死亡率や人工呼吸器装着率を減少させるという報告が多く出現しています.

使用例

厚生労働省の通達では、以下のように使用することが推奨されています⁵⁾. 酸素投与人工呼吸器管理又は体外式膜型人工肺 (ECMO) 導入を要する患者を対象に入院下で投与を考慮します.

通常、 成人には、 副腎皮質ステロイド薬との併用において、 トシリズマブとして1回8mg/kgを点滴静注する. 症状が改善しない場合には、 初回投与終了から8時間以上の間隔をあけて、 トシリズマブとして8mg/kgを1回追加投与できる。

使用に関する注意

以下のように数多く注意点があり、 使用には慎重を要します. 経験ある医師と共に投与を考慮してください (使用前には必ず最新の添付文書や厚労省通知をご確認下さい).

  1. 活動性結核合併例での使用は禁忌である.
  2. 潜在性結核 (LTBI) を有する患者においては結核再活性化の可能性があり、 使用前に結核の既往および接触暴露歴、 結核流行国への渡航などの問診に加え、 IGRA (T-SPOTおよびQFT) の測定を本剤投与前に測定する.
  3. B型肝炎の再活性化が報告されているため、 使用にあたりHBs抗原および抗体HBc抗体の測定を行う (詳しくはB型肝炎ガイドラインを参照⁶⁾)
  4. 細菌性肺炎など他の細菌感染症などと重複している場合は、 そちらの治療を優先する.
  5. IL-6の働きが阻害されるため、 トシリズマブ投与後はCRPが上昇しにくくなる. よって、 新たな病原体による重複感染など別の炎症が起こっても覚知しにくくなる. 身体所見やバイタルサインに加え、 場合によっては白血球数、 プロカルシトニンの変動には細心の注意を払うべきである.

参考文献

  1. N Engl J Med . 2020 Dec 10;383(24):2333-2344.
  2. N Engl J Med 2021; 384:20-30
  3. Lancet. 2021 May 1;397(10285):1637-1645
  4. Clin Infect Dis. 2021 Jul 15;73(2):e445-e454.
  5. https://www.mhlw.go.jp/content/11123000/000884960.pdf
  6. https://www.jsh.or.jp/lib/files/medical/guidelines/jsh_guidlines/B_document-3_20200716.pdf
  7. トップ画像薬剤写真は中外製薬ホームページ製品基本情報より引用

2022年1月21日、 厚生労働省はトシリズマブ (アクテムラ®︎)のCOVID-19に対する薬事承認を行いました.
監修医師:聖路加国際病院 清水真人 他
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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