Vanentらは, 慢性腎臓病 (CKD) 患者を対象に, CKDによる脳内出血 (ICH) のリスクを観察研究と遺伝子解析を組み合わせた3段階の研究で検討. その結果, CKDは一貫してICHの高リスクと関連していることが明らかとなった. 本研究は, JAMA Neurol誌において発表された.
📘原著論文
Vanent KN, et al, Association of Chronic Kidney Disease With Risk of Intracerebral Hemorrhage. JAMA Neurol. 2022 Sep 1;79(9):911-918.PMID: 35969388
👨⚕️HOKUTO監修医コメント
本研究で用いられているメンデルランダム化分析は観察研究データで因果関係を考察できる点が大きなメリットです. ゲノム情報は生まれつき (ランダムに) 決まっていることから, 一種の操作変数と見なすことができるところから開発された解析手法です.
🔢関連コンテンツ
CKDの診断基準とCGA分類
慢性腎臓病の診断基準と重症度分類
背景
CKDとICHの関連は, 両疾患の合併症の可能性があるため, 結論が出ていない.
研究デザイン
- 第1段階:米国のERICH研究において, CKDとICHリスクとの関連を検証.
ERICHのCKDに関するデータが入手可能なすべての参加者を対象.
2010年8月1日から2017年8月1日まで実施し, 1年間参加者を観察.
- 第2段階:英国のUK Biobank (UKB) でERICH研究の再現性を検討.
UKBのすべての参加者がこの研究に含まれた.
- 第3段階:UKBにおいて27のCKD関連遺伝子変異を用いてメンデルランダム化解析を実施し, 遺伝的関連性を検証.
UKBは2006年から2010年にかけて参加者を登録し, 30年間観察を継続する. データ解析は, 2019年11月11日から2022年5月10日まで実施した.
- 曝露:CKDステージ1-5.
- 主要評価項目: ICH発生率
ERICHでは神経画像の専門家によるレビュー, UKBでは自己報告データと国際疾病統計分類第10版コードの組み合わせにより確認
研究結果
<第1段階>
- ICH患者2,914名と, CKDに関するデータが入手可能な対照者2,954名が評価された.
- CKDは独立して高いICHリスクとの関連が認められた.
OR 1.95, 95%CI 1.35-2.89, P<0.001
<第2段階>
- UKB (ICH患者:1,341名, 対照者:501,195名) における再現でも, この関連が確認された.
OR 1.28, 95%CI 1.01-1.62, P=0.04
<第3段階>
- メンデルランダム化解析では, 遺伝的に決定されたCKDがICHリスクと関連していることが示された.
OR 1.56, 95%CI 1.13-2.16, P=0.007
結論
特徴や研究デザインが異なる2つの大規模観察研究に登録された研究参加者を対象に, 観察および遺伝子解析を組み合わせた3段階研究において, CKDは一貫してICHの高リスクと関連していた. メンデルランダム化分析により, この関連は因果関係であることが示唆された.