海外ジャーナルクラブ
6ヶ月前
Wangらは2型糖尿病患者を対象に、 グルカゴン様ペプチド-1 (GLP-1) 受容体作動薬の投与と肝細胞癌発症率および肝代償不全イベントとの関連性について、 後ろ向きコホート研究で検討した。 その結果、 GLP-1受容体作動薬は他の糖尿病治療薬と比較して、 肝細胞癌および肝代償不全イベントの発症リスクを低下させることが示された。 本研究はGastroenterologyにおいて発表された。
本研究結果をどのように受け取るのかは読み手が試されるようなところもあります。 本文のlimitationには因果関係を推論することはできない。 加えて、 GLP-1受容体作動薬が肝細胞癌にどのような影響を及ぼすのか、 その根本的なメカニズムを直接的に検討することはできなかった、 と記載されています。
GLP-1受容体作動薬は2型糖尿病の治療薬として米食品医薬品局 (FDA) に承認されており、 肝細胞癌の危険因子を減少させる多面的効果が期待されている。
肝細胞癌の診断歴がなく、 2013年1月~2019年2月に、 GLP-1受容体作動薬およびその他の糖尿病治療薬 (インスリン、 メトホルミン、 SU薬、 チアゾリジン薬、 DPP4阻害薬、 SGLT2阻害薬の6種類) を処方された2型糖尿病患者 : 189万20例
GLP-1受容体作動薬を処方された症例とその他の糖尿病治療薬を処方された症例のコホート間で、 肝細胞癌の発症および肝代償不全イベントを比較した。
5年間の追跡期間中における肝細胞癌の発症 (初回診断)
肝代償不全イベント (腹水、 特発性細菌性腹膜炎、 肝性脳症、 食道静脈瘤) の発生
平均年齢 : 54歳
GLP-1受容体作動薬を処方され、 インスリンを使用していない患者は、 インスリンを使用しGLP-1受容体作動薬を使用していない患者と比較して、
の割合が多かった。
GLP-1受容体作動薬コホートは、 インスリンコホート、 スルホニル尿素コホートと比較して、 肝細胞癌発症リスクが有意に低下していた。
メトホルミン、 DPP4阻害薬、 SGLT阻害薬、 チアゾリジン薬のコホートとの間に有意差はなかった。
GLP-1受容体作動薬コホートの肝細胞癌および肝代償不全イベントのリスクは、 肥満や喫煙・飲酒の有無にかかわらず、 インスリンコホートより有意に低かった。
肝疾患 (MASLD、 MASH、 肝線維症、 肝硬変) のない患者において、 インスリンコホートと比較したGLP-1受容体作動薬コホートにおける肝細胞癌リスクは、 より強い改善が認められた。
HR 0.18 (95%CI 0.11-0.31)
GLP-1受容体作動薬と肝細胞癌および肝代償不全イベントとの関連性は、 肥満や飲酒、 喫煙の有無にかかわらず同様にインスリンコホートに比べて低く、 その効果は体重減少とは無関係であることが示唆された。
GLP-1受容体作動薬とインスリンを併用した場合、 GLP-1受容体作動薬単剤療法と比べて肝細胞癌のリスクが上昇した。
HR 3.36 (95%CI 2.22-5.10)
Wangらは「2型糖尿病患者におけるGLP-1受容体作動薬の投与は、 他の糖尿病治療薬と比較して、 肝細胞癌および肝代償不全の発症リスクの低下に関連がある」と結論付けている。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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