海外ジャーナルクラブ
2年前
Chewらは, 脳卒中既往がない非弁膜症性心房細動 (NVAF) 患者を対象に, リスク分類に基づく脳卒中予防の至適治療をMarkovモデルを用いた意思決定分析で検討した. 結果, 左心耳閉鎖術は抗凝固薬の代替となりうるが, 左心耳閉鎖術が有益であるためには脳卒中リスクが十分に低いことが必要であることが示唆された. 本研究は, Ann Intern Med誌において発表された.
一見難しいのですが 「我々の日常の臨床判断を研究で明確にした」 と言えると思います. AとBという2つの治療でどちらか一方が絶対的に良い, というのではなく, 時と場合によって (リスクとベネフィットが患者のさまざまな状態において)異なることを明らかにしています (今回の研究ではHAS-BLEDスコアとCHA₂DS₂-VAScスコアを使用しています).
左心耳閉鎖術は, 心房細動 (AF) 患者の一部において, 経口抗凝固薬に代わる治療法として期待されている. 抗凝固薬と比較して, 左心耳閉鎖術は大出血のリスクを減少させるが, 抗凝固薬と比較して脳梗塞リスクを変化させるかについては不明であった.
非弁膜症性心房細動で脳卒中既往がない患者.
介入:左心耳閉鎖術とワルファリンまたは直接経口抗凝固薬 (DOAC) の比較.
主要評価項目:質調整生存年 (QOLY) で測定した臨床的有用性.
出血リスクが高い場合, 左心耳閉鎖術が有利であったが, 脳梗塞のリスクが高くなるとその利点は確実でなくなった.
出血リスクが低い (HAS-BLEDスコア 0~1点) 場合に, 左心耳閉鎖術がQALYで有利となる確率 (80%以上)は, 脳梗塞リスクが低い (CHA₂DS₂-VAScスコア 2点)患者に限定されていた.
左心耳閉鎖術は, AFで出血リスクの高い患者において, 脳梗塞予防のための抗凝固薬の代替となりうるが, その全体的な有益性は, 個々の患者の脳梗塞と出血リスクの組み合わせに依存するものである. これらの結果は, 左心耳閉鎖術が有益であるためには, 脳梗塞リスクが十分に低いことが必要であることを示唆している. 著者らは, これらの結果が, 左心耳閉鎖術の対象患者を選択する際の意思決定を改善する可能性があると考えている.
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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