HOKUTO編集部
3ヶ月前
婦人科領域における注目キーワードについて解説する連載が始まります。 第1回は、 2024年11月22日に局所進行子宮頸癌に対して国内承認されたKEYNOTE-A18レジメン (ペムブロリズマブ+CCRT) について、 実臨床での導入ポイントなどを解説いただきます (解説医師 : 東京慈恵会医科大学産婦人科学講座講師 西川忠曉先生)。
子宮頸癌は一般的に放射線感受性の高い腫瘍であり、 局所進行の状態 (Ⅰ期の一部~ⅣA期) に対しては同時化学放射線療法 (CCRT) が標準治療と定められている (一部の病期に対しては、 広汎子宮全摘出術も標準治療である)。
CCRTにおいて併用される抗癌薬はシスプラチンであり、 その役割は放射線増感剤と呼ばれ、 放射線治療の効果を高めることにある。 1999年にN Engl J Med誌に発表された第Ⅲ相試験GOG120では、 放射線治療にシスプラチンの毎週投与を6回併用することで、 局所進行子宮頸癌の無増悪生存期間 (PFS) ならびに全生存期間 (OS) が改善されることが報告された¹⁾。
KEYNOTE-A18試験は、 FIGO2014進行期分類 (FIGO2014) でⅠB2~ⅡB期*¹またはⅢ~ⅣA期*²の未治療局所進行子宮頸癌患者を対象とし、 プラセボ+CCRT群と抗PD-1抗体ペムブロリズマブ+CCRT群*³を、 PFSとOSを主要評価項目として比較した、 国際共同二重盲検第Ⅲ相無作為化比較試験 (優越性試験) である²⁾³⁾。
90例の日本人を含む合計1,060例の局所進行子宮頸癌患者が登録され、 層別化因子として以下の3項目が設定された。
PFS、 OSいずれも有意に改善
プラセボ+CCRT群に対するペムブロリズマブ+CCRT群のPFSのハザード比が0.70 (95%CI : 0.55-0.89、 p=0.0020)、 OSのハザード比が0.67 (95%CI : 0.50-0.90、 p=0.0040) であり、 PFS・OSともにペムブロリズマブ併用による優越性が示された。
PFS
OS
新たな有害事象はなし
既存の免疫関連有害事象以外の新たな有害事象は認められず、 副作用で死亡に至った患者が両群に2例 (0.4%) ずつ報告された。 なお、 ペムブロリズマブ+CCRT群における死亡例は、 免疫性胃炎と大腸穿孔が原因とされている。
ペムブロリズマブ+CCRTはⅢ~ⅣA期 (FIGO2014) を対象とし、 2024年1月に米食品医薬品局 (FDA) より、 2024年9月には欧州医薬品庁 (EMA) より承認を取得した。
なお、 最新のNCCNガイドライン (version 1, 2025) では、 Ⅲ~ⅣA期 (FIGO2014) がcategory 1、 Ⅲ~ⅣA期 (FIGO2018) がcategory 2Bと記されている。 これはサブグループ解析で、 LN転移陽性のⅠB2~ⅡB期 (FIGO2014) では、 CCRTに対するペムブロリズマブの上乗せ効果が示されなかったことによるものと考えられる。
添付文書上の適応は局所進行子宮頸癌とされているが、 KEYNOTE-A18試験における対象病期は 「未治療かつFIGO 2014分類のⅠB2~ⅡB期 (リンパ節転移陽性) またはⅢ~ⅣA期 (リンパ節転移陽性又は陰性)」 であり、 これはFIGO2018分類のⅢ~ⅣA期に相当する。 また、 その他の主要な対象基準については、 組織型は扁平上皮癌、 腺癌、 腺扁平上皮癌で、 ECOG PSは0~1であった。
そのため、 その他の希少な組織型やECOG PSが2以上の患者の局所進行子宮頸癌におけるペムブロリズマブ+CCRTの有効性は不明である。 こうした治験の対象外 (out of criteria) かつ保険適応となる患者については、 実臨床の現場で慎重に使用経験を集積し、 有効性や安全性を共有していくことが重要である。
子宮頸癌Ⅲ~ⅣA期 (FIGO2018) に対するCCRTにおいて25年ぶりに、 PFSならびにOSの延長がペムブロリズマブ併用によって示された。 子宮頸癌に対する治療法は大きな転換期を迎えている。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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