【GL改訂】米国糖尿病学会「糖尿病の標準治療2025」発表
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HOKUTO編集部

5日前

【GL改訂】米国糖尿病学会「糖尿病の標準治療2025」発表

【GL改訂】米国糖尿病学会「糖尿病の標準治療2025」発表
米国糖尿病学会 (ADA) は2024年12月9日、  「糖尿病の標準治療2025」 (Standards of Care in Diabetes—2025)¹⁾ を発表した。 毎年改訂されている本ガイドラインでは、 今回も多岐にわたる改変がみられた。 「薬物治療」 では 「すべての糖尿病患者に対する追加の推奨事項」  「特別な状況と集団」 が新たな節として追加され、 「成人2型糖尿病の薬物治療」 の節では左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)、 代謝機能障害関連脂肪性肝疾患 (MASLD) や代謝機能障害関連脂肪肝炎 (MASH) を伴う肥満2型糖尿病に対する項目等が追加された。 

「糖尿病の標準治療 2025」 とは

ADAが発表した"Standards of Care in Diabetes—2025"は、 米国における糖尿病の診療ガイドラインと位置付けられており、 糖尿病患者のケアに携わる医療従事者にとって不可欠なリソースである。

糖尿病の診断・治療の戦略、 合併症や併存疾患の予防、 スクリーニング、 診断、 および管理を対象とし、 推奨事項には若年者、 成人、 高齢者の生涯にわたるケアが含まれる。 糖尿病患者へのケアの最適化を目的として各セクションは毎年見直され、 最新のエビデンスに基づく推奨事項に更新される。 併せて実践のためのガイダンスが提示される。

薬物治療の改訂事項

成人2型糖尿病の薬物治療

第9章 「薬物治療」 では、 「成人2型糖尿病の薬物治療」 の節で以下の項目が新設された。

(9.12)

HFpEFを伴う肥満2型糖尿病患者では、 効果が実証されているGLP-1受容体作動薬が推奨される。

(9.15)

MASLDを伴う肥満2型糖尿病患者では、 GLP-1受容体作動薬またはグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)とGLP-1受容体作動薬の併用を検討する。

エビデンスレベルB

(9.16a)

MASHを伴う肥満2型糖尿病患者、 または非侵襲的検査で肝線維症のリスクが高い成人では、 ピオグリタゾン、 GLP-1受容体作動薬、 またはGIPとGLP-1受容体作動薬の併用が推奨される。

エビデンスレベルB

(9.16b)

MASHを伴う肥満2型糖尿病患者、 または非侵襲的検査で肝線維症のリスクが高い患者では、 ピオグリタゾンとGLP-1受容体作動薬の併用が考慮される可能性がある。

エビデンスレベルB

(9.21)

DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬、またはGIPとGLP-1受容体作動薬の併用は、 GLP-1受容体作動薬単独よりも高い血糖降下効果がないため、 推奨されない

エビデンスレベルB
エビデンスレベルについてはこちらを参照

成人1型糖尿病の薬物治療

「成人1型糖尿病の薬物治療」 の節は、 新設された節に推奨の1項目が移動されたのみで、 他の推奨は2024年版から変更されていない。

すべての糖尿病患者に対する追加の推奨事項

第9章には 「すべての糖尿病患者に対する追加の推奨事項」 が新たな節として追加され、 以下の項目が推奨された。

(9.27)

インスリン療法中は基礎インスリン過剰の兆候をモニターする。 基礎インスリンの過剰が疑われる場合は、徹底的な再評価を速やかに行うべきである。

(9.28)

グルカゴンは、 強化インスリン療法を必要とする患者や低血糖リスクが高い患者すべてに処方されるべきである。 周囲はグルカゴンの保管場所を把握し、 投与方法について教育を受けるべきである。 再溶解を必要としないグルカゴン製剤が望ましい。

エビデンスレベルB

(9.29)

すべての糖尿病患者について、 糖尿病管理を妨げる可能性のある経済的障害がないか定期的に評価する。 医療従事者等は適切かつ実行可能な範囲で協力し、 費用を削減する戦略でサポートを行い、 エビデンスに基づく治療へのアクセスを改善する必要がある。

(9.30)

費用関連の障壁がある成人糖尿病患者の場合、 低血糖、 体重増加、 心血管・腎臓イベント、 および副作用のリスクを考慮して、 より安価な糖尿病治療薬の使用を検討する。

なお、これらの推奨はいずれも、 2024年版では 「成人1型糖尿病の薬物治療」 および 「成人2型糖尿病の薬物治療」 の節で扱われていた。

特別な状況と集団

第9章には 「特別な状況と集団」 も新たな節として追加され、 以下の項目が推奨された。

(9.31a)

FDAによって承認されていない配合薬の使用は推奨されない。

エビデンスレベルE

(9.31b)

血糖降下薬が供給不足などで入手できない際は、 臨床的に適切な場合、 同様の効能を持つ別のFDA承認薬に切り替えることが推奨される。

エビデンスレベルE

(9.31c)

供給不足などが解消し入手可能となった際は、 FDA承認の元の薬剤を再開することの妥当性を再評価する。

エビデンスレベルE

(9.32a)

妊娠可能な糖尿病患者は、 避妊/一部の血糖降下薬が避妊効果に与える影響についてカウンセリングを受けるべきである。

エビデンスレベルA/C

(9.32b)

妊娠前の計画に対する個人中心の共同意思決定アプローチは、 糖尿病患者および妊娠の可能性があるすべての人にとって不可欠である。 妊娠前の計画では、 血糖目標の達成、 インスリン以外の血糖降下薬の中止時期、 妊娠に備えて最適な血糖管理に取り組む必要がある。

(9.33)

糖尿病性ケトアシドーシスを発症するリスクがある、 またはケトン食の習慣があり、 SGLT阻害剤による治療を受けている糖尿病患者に対して、 ケトアシドーシスのリスクと兆候、 およびリスク軽減管理の方法について教育し、 正確なケトン測定のための適切なツールを提供する。

薬物治療以外の改訂事項

注目すべき改訂事項を以下に示す。

- インスリン以外の血糖降下薬で治療中である成人の2型糖尿病患者に対する持続血糖モニター (CGM) 使用の検討

- 1型糖尿病の家族歴あるいは既知の遺伝的リスクがある患者に対して、 1型糖尿病発症前の自己抗体に基づくスクリーニングの実施

- 植物由来のタンパク質や食物繊維を含めた、 エビデンスに基づく食事指導

- 糖尿病性ケトアシドーシス (DKA) および高浸透圧性高血糖状態 (HHS) への対処

- 糖尿病による苦痛、 うつ病、 不安、 低血糖の恐怖、 摂食障害行動に対して、 医療従事者が行うべきスクリーニング

詳細はこちらを参照されたい。


<出典>
1) American Diabetes Association : Standards of Care in Diabetes—2025.

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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